2011年08月11日

ドメインと商標権と不正競争防止法 その2 ドメインと不正競争防止法

 前回ブログに書いたように、商標権上では、「登録商標」と同一や類似のドメイン名を、「同一類似する指定商品」に対して使われている場合以外は、商標権を侵害していることにはなりません。
 文献には、「同一や類似ではない商品の役務」に商標(例えば、登録されていない商標)を含む表示があり、消費者に商品などの混同を引き起こす行為があった場合について書かれていました。

 不正競争防止法において、ドメイン名の使用に関連する不正競争行為は、不正競争防止法2条1項1号と、同法2条1項2号に定義されています。
 (注:今回の私のブログでは、あくまでも「ドメイン名の使用に関連する不正競争行為」のみを扱っています)
 また、不正競争防止法第2条1項12号には、ドメインの不正行為が定義されています。



 消費者に混同を引き起こす行為(混同惹起行為)は、不正競争防止法2条1項1号に書かれています。


 不正競争防止法第2条1項1号

 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為


 著名な表示と同一、類似の表示を他人が使用した場合(著名表示冒用行為)については、不正競争防止法第2条1項1号に記載があります。


 不正競争防止法第2条1項2号

 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為



 不正競争防止法第2条1項1号と、同法第2条1項2号に該当するドメインの使用(「商品等表示」に該当性、「周知性」または「著名性」の有無、「商品等表示の使用」の該当性、「商品等表示」の類否)については、文献に次のように書かれていました。


(1)「商品等表示」の該当性

 不正競争に該当するためには、ドメインが「商品等表示」に該当しなければならない。
 商品等表示とは、不正競争防止法2条1項1号括弧書き(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)を言う。
 ここにいう「商品」とは、有体物、無体物であることを問わず、「識別製ないし個別化の可能性によってその範囲を画すべき」ものであるとされる。

 不正競争防止法における「営業」とは、広く解されており、「事業」といえる。
 事業は営利性を問題としない。

 ドメイン名が「商品等表示」に当たるというためには、識別力を有し、商品または営業を表示しているかどうかが問題となる。


(2)「周知性」(1号)または「著名性」(2号)の有無

 1号の要件である周知性
・周知とは、「特定の者の商品あるいは営業であることを示す表示であることが、相当範囲の需要者の間に広く知られている客観的な状態」のことをいう。
・周知性の地域範囲は、「日本国内に限られないが、原則として日本国内」であること。
・周知性の地域範囲は、全国周知に限らず、一地域で周知であることが求められる。
・不正競争防止法3条の差止請求権を求めるには、自己の営業地域のみならず、差止めの相手方の地域においても周知であることが必要となる。
・周知性の判断については、「商品・役務の性質・種類、取引態様、需要者層、宣伝活動、表示の内容等の諸般の事情から総合的に判断」される。
・需要者とは、「最終需要者に至るまでの各段階の取引業者も」含むものである。

 2号の要件である著名性
・通常の経済活動において、相当の注意を払うことによりその表示の私用を避ける程度にその表示が知られていること」が求められる。
・著名性の地域的範囲は、原則として日本国内で全国的であることとされる。


(3)「商品等表示の使用」の該当性

 「商品等表示の使用」とは、「他人の商品等表示を商品または営業に用いること」を指している。
 ドメイン名が商品等表示に該当したとしても、商品等表示として使用されていなければ、不正競争行為にあたらない。
 ドメイン名登録をするのみでウェブページを開設しなければ、商品等表示の使用とは認められない。
 ドメイン名の使用のみで、「商品または営業との関係でその出所を表示するものとしてドメイン名が使用されていなければ、商品等表示の使用とは認められない」と解するのが通説的理解である。


(4)「商品等表示」の類否

 表示の類否性について、判例「日本ウーマンパワー事件」(最高裁判 昭和58年10月7日 民集37巻8号1084ページ)において、「取引の実情のもとにおいて、取引者、需要者が、両者の外観、呼称、概念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として」判断するのを相当とするとしている。

 1号にいう「混同を生じさせる行為」には、両表示に直接の営業主体の混同を生じさせる「狭義の混同惹起」だけでなく、なんらかの関係があると誤信させる「広義の混同惹起行為」も含む。



 不正競争防止法2条1項12号で、ドメイン名の不正行為が規定されたのは、不正競争防止法第2条1項1号と2号の適用外の不正なドメインに対応するためです。


 不正競争防止法第2条1項12号

 不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものをいう。)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為


 この条文についての解説が、文献に次のように書かれていました。

 
 不正競争防止法2条1項12号にいう「不正競争」行為というためには、次の三要件を満たす必要がある。

@ 不正の利益を得る目的(図利加害目的)
・「不正の利益を得る目的」とは、「公序良俗、信義則に反する形で自己または他人の利益を不当に図る目的」であり、「単に、ドメイン名の取得、使用等の過程で些細な違反があった場合等を含まないというべき」とされる。
・ 他人い損害を加える目的」とは、「他者に対して財産上の損害、信用の失墜といった有形無形の損害を与える目的」をいう。
 (例:自己の保有するドメイン名を不当に高額な値段で転売する目的、他人の顧客週引力を不正に利用して事業を行う目的、当該ドメイン名との関連性を推測される企業に損害を加える目的を有する場合など)

 本号で図利加害目的を設けているのは、「保護対象に周知性または著名性を要件としないこと、ドメイン名の使用行為に限らず取得、保有行為をも対象とすること」から、過度の規制を避け、違法性の高い行為だけを取り上げたものといえる。

 マクセル事件において、著名表示と類似するドメイン名の使用が図利加害目的にあたるとした。


A 他人の特定商品等表示と同一もしくは類似すること(類否)

・「他人」とは、自然人や法人はもちろん、法人格の有無にかかわらず、団体や企業グループも含み、特定商品表示の主体となるものであればよいとされている。
・特定商品等表示とは、不正競争防止法2条1項12号に規定されている「人の業務に係る氏名、商号、標章その他商品または役務を表示するもの」である。


Bドメイン名を使用する権利を取得、保有、使用する行為であること

・「ドメイン名を使用する権利」とは、ドメイン登録機関にドメイン名の使用を請求できる権利をいう。
・「ドメイン名を取得する行為」には、ドメイン名の登録機関に対する登録申請によってドメイン名を使用する権利を自己のものとする場合の他、登録機関からドメイン名の登録を認められた第三者から移転を受けることによってドメイン名を使用する権利を自己のものとする場合、登録機関からドメイン名の登録を認められた第三者からドメイン名の使用許諾を受ける場合も含まれている。
・ 「ドメイン名を使用する行為」とは、ドメイン名をウェブサイト開設等の目的で用いる行為を指している。
・「ドメイン名を使用する権利を保有する行為」とは、ドメイン名を使用する権利を継続して有することである。
 (登録時点では図利加害目的がなくても、使用で図利加害目的を有するに至った場合にも規制の対象とするため、「保有」する行為が明記されている)



 尚、不正競争防止法で規定された不正なドメインに対しては、以下の条文に救済が規定されています。

・ 不正競争防止法3条(差止請求権)
・ 不正競争防止法4条、5条(損害賠償請求)



 (次回、「その3 判例から考えるドメイン名と商標権」に続く)
ラベル:商標権
posted by NEDS at 22:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 商標権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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