2011年09月07日

ドメインと商標権と不正競争防止法 その3 判例から考えるドメイン名と商標権

 ドメインと商標権と不正競争防止法
その3 判例から考えるドメイン名と商標権



 ブランディングなどのために、商標とドメインを同じものにしたい。
 もしドメイン名を商標として出願すると、どうなるのでしょうか?
 このような場合について、今回は判例から学んでみました。

 紹介する判例は、ドメイン名を商標として出願する場合や、商標として判断されるのはドメイン名のどの部分かを考える上で参考になると思います。
 (このブログでは概要をまとめただけですので、詳細を知りたい方は、実際の判例をお読み下さい)



平成20年(行ケ)第10295号 審決取消請求事件
知財高裁(判決言渡 平成21年1月29日)
判決:原告の請求を棄却

 原告である企業が特許庁が不服2007―1926号事件について、平成20年6月12日にした審決の取り消しを求めた事案です。
 争点は、原告である企業が出願した商標と類似するか(以下、「本願商標」と記載)が引用商標(商標法4条1項11号)でした。

 本願商標は二段の横書きの文字列で構成されていました。
 上段に"SPORTS LABORATORY"という文字が書かれ、その下に"Sportsman.jp"の文字が"SPORTS LABORATORY"よりも大きな太字で書かれていました。


 この商標に対し、特許庁が示した5つの引用文献には、"SPORTSMAN"、 "SPORTS MAN"、「スポーツマン」という文字が書かれていました。
 特許庁が示した審決の主な内容は、「本願商標は引用文献と類似し、指定商品においても同一または類似のものを含むから、商標法4条1項11号により商標登録を受けることができない」というものでした。
 そこでこの企業は、審決の取り消しを求めました。


 <企業側が主張する審決取り消しの主張の概要>

・商標の上段の文字と下段の文字は一体である。
・下段の文字は"sportsman.jp"であり、"sportsman"だけに自他商品の識別標識(自社と他者の商品を区別できる)をする機能があるわけではない。
・下段の文字の"sportsman.jp"について、"sportsman"と".jp"を分けたり、".jp"を除外したりする必要はない。
・".jp"を含めた文字、"sportsman.jp"からは、「スポーツマン」という呼称は生じない。
・".jp"を含めた文字、"sportsman.jp"からは、「運動競技選手」、「スポーツの得意な人」のような観念(イメージ)が生じることを考慮する意味はない。


 <特許庁側の主張(反論)の概要>

・下段の"sportsman.jp"の文字は上段の文字に比べて大きく、太字で書かれていることから、下段の"sportsman.jp"の文字部分も自他商品の識別標識機能がある。
・下段の"sportsman"の文字は、「スポーツマン、運動好きな人」を意味する英語であり、".jp"の文字は、インターネットにおける国別コードトップ・レベル・ドメイン名(以下、「ccTLD」と記載)を意味するため一般的な表示として知られているもので、"sportsman.jp"の文字は、全体としてドメインの形式によるものと理解される。
・"sportsman.jp"の文字部分は、外観上も中間にピリオドがあるため、"sportsman"と".jp"の文字が分離されて見られる。
・"sportsman.jp"の文字全体から生じる読み方、「スポーツマンドットジェイピー」は13音と長く、"sportsman"の観念については「スポーツマン(運動競技の選手、スポーツの得意な人)」を意味する言葉として知られているため、"sportsman.jp"の文字全体からはドメイン名として理解いされる場合があるとしても、それ以上の特定の意味を持たない。
・以上の理由から、"sportsman"にも自他商品の識別能力がある。
・引用文献では、"SPORTSMAN"、 "SPORTS MAN"、「スポーツマン」の文字から構成されるため、「スポーツマン(運動競技の選手、スポーツの得意な人)」の観念が生じる。そのため、本願商標と引用文献とは、呼称および観念が共通している商標で、同一または類似の商品に使った場合、その出所(販売者など)について誤認混同(間違えたり混乱したりする)ことが起きる恐れがある。


 <裁判所の判断の概要>

(1)商標の類否の判断

・商標法4条1項11号にかかわる商標の類否は、対比される両商標(本願商標と引用文献)は、類似の商品または役務に使用された場合に、商品または役務の出所に誤認混同を生じる恐れがあるか否かで決めるべき。
・商品またはそれには商標の外観、観念、呼称等が取引者、需要者(お客さんなど)に与える印象、記憶、連想当を総合して考察すべきで、しかもその商品の取引の実情を明らかにし、できる限り、具体的な取引の状況に基づいて判断すべきである。・商標は、その構成部分全体によって他人の商標と識別すべく考案されているもので、みだりに、商標構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは許されない(商標に含まれる一部の文字だけで他人の商標と同じか、似ているか、などを判断してはいけないという意味)。
・しかし取引の実際では、各構成部分がそれを分離して観察(商標の文字の一部だけを見る)することが不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常に必ずしもその構成部分全体の名称によって呼称、観念されず、その一部だけによって簡略に呼称、観念される。
・複数の構成部分の一部(例えば、商標に含まれる一部の文字)が、取引者、需要者(お客さんなど)に対して、商品や役務(サービスなど)の出所識別標識として強い印象を与えるものと認められる場合、商標のそれ以外の部分から出所識別標識としての呼称、観念が生じないと認められる場合などは、商標の一部を抽出し、この部分を他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断できるというべき。

(2)ドメインについて
・国別コードトップ・レベル・ドメイン(ccTLD この場合は「.jp」)によって、そのドメイン名を取得した主体(運営者や管理者など)が日本に存在する団体または個人であるということは明らかになるが、それ以上に主体が特定されるものではない。
・多くの企業が、自社名や自社ブランド名をセカンド・レベル・ドメイン以下に付けたドメイン名を取得している。

(3)本願商標について
・本願商標について、上段の"SPORTS LABORATORY"と下段の"sportsman.jp"の文字は、取引において分離して観察され、しかも、下段の文字が上段の文字に比べてかなり目立つため、取引者、需要者に対し、商品または役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと言うことができる。
・本願商標の下段、"sportsman.jp"の文字は、ccTLDの".jp"と"sportsman"が結合したドメイン名を想起させることは明らかである。
・ccTLDの".jp"の部分から出所識別標識としての呼称、観念が生じることはできないため、本願商標の下段"sportsman.jp"の重要な部分は、"sportsman"である。
・本願商標の"sportsman"と引用文献では、呼称および観念が同一であり、外観も類似すると言うことができる。



 <ドメイン名を商標として出願する場合のポイント>

 この判例から、ドメイン名を商標として出願する場合、以下の方針が有効と思われました。

1.セカンドレベルドメインに、出所表示の識別機能がある文字を入れる。
・商標権を取得できるセカンド・レベル・ドメインを目指す。
・ドメイン名から、トップ・レベル・ドメイン(.jpや.comなど)を除いた文字について商標権の調査が必要。
・ドメイン名を取得できる(商標権が登録できても、ドメイン名が使えなければ意味がありません)。

2.ドメインを取得できることと、商標登録の違いに注意。
・ドメイン登録と商標権は、それぞれ別のことです。
ラベル:商標権
posted by NEDS at 23:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 商標権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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