2012年02月13日

プロダクト・バイ・プロセス・クレームを考える その2 プロダクト・バイ・プロセス・クレームと特許調査

 本願の請求項記載の発明がプロダクト・バイ・プロセス・クレームである場合の先行技術調査と、侵害回避調査において引用文献の請求項記載の発明がプロダクト・バイ・プロセス・クレームであった場合の対応について考えてみました。

 前回の記事と重複した部分が多いので、悪しからずご了承下さい。
 尚、この記事の記載内容に誤り、または訂正すべき点等がありましたら、大変お手数ですがニーズデザインまでご連絡頂ければ嬉しいです。



1.先行技術調査

 発明の新規性、進歩性、及び先願の有無を審査する特許の実体審査の判断は、特許・実用新案審査基準に基づいて行われます。
 発明者に対し審査請求の判断材料を提供する目的で行われる先行技術調査においても、特許審査基準に基づいて行うべきです。
 従って、本願の請求項がプロダクト・バイ・プロセス・クレームにより記載されている発明の先行技術調査は、以下の方法によって行うことが望ましいと考えられました。


(1)請求項記載の発明の解釈
@ 請求項記載の発明は、最終的に得られた生産物を意味すると解する。
A ただし、請求項の記載が明確であっても、請求項に記載された用語(発明特定事項)の意味内容が明細書及び図面において定義又は説明されている場合は、その用語を解釈するにあたってその定義又は説明を考慮する。


(2)新規性及び進歩性の判断

 プロダクト・バイ・プロセス・クレームの新規性及び進歩性の判断に対し、合理的な疑いを抱くケースは次の通りです。

@ 新規性
・請求項に係る発明と出発物質が類似で同一の製造工程により製造された物の引用発明を発見した場合
・請求項に係る発明と出発物質が同一で類似の製造工程により製造された物の引用発明を発見した場合
・出願後に請求項に係る発明の物と同一と認められる物の構造が判明し、それが出願前に公知の発明から容易に発明できたものであることが発見された場合
・本願の明細書若しくは図面に実施の形態として記載されたもの又はこれと類似のものについての進歩性を否定する引用発明が発見された場合

A 進歩性
・請求項に係る発明と出発物質が類似で同一の製造工程により製造された物の引用発明を発見した場合
・請求項に係る発明と出発物質が同一で類似の製造工程により製造された物の引用発明を発見した場合
・出願後に請求項に係る発明の物と同一と認められる物の構造が判明し、それが出願前に公知の発明から容易に発明できたものであることが発見された場合
・本願の明細書若しくは図面に実施の形態として記載されたもの又はこれと類似のものについての進歩性を否定する引用発明が発見された場合

 ただし、引用文献の発明がプロダクト・バイ・プロセス・クレームによって記載されたものである場合は、これらの扱いをしません。


(3)先願の判断(特許法39条)

 特許・実用新案審査基準(「第4章 特許法第39条 3.6 製造方法による生産物の特定を含む請求項についての取扱い」によると、「当該生産物と先願発明の物との厳密な一致点及び相違点の対比を行わずに、審査官が、両者が同じ物であるとの一応の合理的な疑いを抱いた場合には、第39条に基づく拒絶理由を通知する。」との記載があります。
 ただし、引用文献の発明がプロダクト・バイ・プロセス・クレームによって記載されたものである場合は、これらの扱いをしません。

・請求項に係る発明と出発物質が類似で同一の製造工程により製造された物の先願発明を発見した場合
・請求項に係る発明と出発物質が同一で類似の製造工程により製造された物の先願発明を発見した場合
・出願後に請求項に係る発明の物と同一と認められる物の構造が判明し、それが先願発明であることが発見された場合
・本願の明細書若しくは図面に実施の形態として記載されたものと同一又は類似の先願発明が発見された場合

 尚、この特例の手法を使わずに第39条の判断を行うことができる場合には、通常の手法により引用文献が先願であるかを判断をします。



2.侵害回避調査

 実体審査が特許庁により行われるものであるのに対し、特許権侵害訴訟は裁判所で行われます。
 従って、侵害回避調査の場合は判例に基づいた調査が有効であると考えられました。
 平成22年(ネ)第10043号の判例(http://www.ip.courts.go.jp/documents/pdf/g_panel/10043.pdf)では、プロダクト・バイ・プロセス・クレームで請求項に記載された発明は、物の特定を直接的にその構造又は特性によることが出願時において不可能又は困難である場合と、それ以外の場合では、権利範囲が異なることが示唆されました。

 そこで、侵害回避調査の結果、引用文権の請求項記載の発明がプロダクト・バイ・プロセス・クレームである場合、

@ 引用文献の請求項記載の発明が、物の特定を直接的にその構造又は特性によることが出願時において、不可能又は困難である場合(真性プロダクト・バイ・プロセス・クレーム)。
→ 発明の技術的範囲は,「特許請求の範囲に記載された製造方法に限定されることなく、同方法により製造される物と同一の物」と解釈される。

A 引用文献の請求項記載の発明が、物の特定を直接的にその構造又は特性によることが出願時において、不可能又は困難であるとは言えない場合(不真性プロダクト・バイ・クレーム)。
→ 発明の技術的範囲は、「特許請求の範囲に記載された製造方法により製造される物」に限定されると解釈される。

 @の場合は、「製造された物」に対して、権利侵害となる可能性を検討する必要があります。
 Aの場合は、「引用文献の請求項記載の製造方法で生産された物」に対して、権利侵害となる可能性を検討します。

 侵害回避調査をする立場としては、問題になるのは、引用文献の発明が真性プロダクト・バイ・クレームか、不真性プロダクト・バイ・クレームかの判断だと思いました。
 明細書に「物の特定を直接的にその構造又は特性によることが出願時において、不可能又は困難である」といった内容の説明が記載されていれば、それを参考に判断できると思われます。
 もしこのような記載がない場合は、出願当時の技術常識などから判断するなどの対応が必要と考えられました。
ラベル:特許
posted by NEDS at 23:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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