2012年07月25日

商標登録を目指す場合のネーミング 第2回 商標法4条1項1号〜4条1項9号に関する審査基準

 前回に引き続き、商標法4条1項1号〜4条1項9号に関する商標審査基準の内容をまとめてみました。
 商標法4条では、「商標登録を受けることができない商標」が規定されています。
 商品名、サービス名、ブランド名などの商標登録出願を目指す場合に、拒絶されにくいネーミングを考えるヒントにどうぞ。

 このブログにまとめた商標審査基準の詳細は、「商標審査基準(改定第10版)」(http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/kijun/kijun2/syouhyou_kijun.htm)に掲載されています。
 商標法の条文は、http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S34/S34HO127.html に掲載されています。

 平成23年の商標法の改正(平成23年法律第63号)についての解説は、平成23年法律改正(平成23年法律第63号)解説書の第11章(http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/hourei/kakokai/tokkyo_kaisei23_63.htm)に掲載されています。
 この改正に伴う商標審査基準の改正(平成24年4月1日より施行)の説明は、特許庁のサイト(http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/t_torikumi/shinsa_kijun_kaisei.htm
に掲載されています。

 商標法の審査基準や条文などを読むときは、「商標」の意味に注意してください。
 ここでいう「商標」とは、商標登録出願をしていない商品名、サービス名、ロゴ、トレードマークなどを含みます。
 「商標」を登録出願して、審査を経て登録された商標を「登録商標」といいます。

 尚、このシリーズのブログ記事では、条文や審査基準等の意図を損なわない範囲で、簡易的な表現で記述することを心がけています。
 内容の誤りや誤解を招く表現等がありましたら、大変お手数ですがご連絡下さい。
 また、明細書作成や出願のご依頼は、弁理士さんや弁護士さんへご相談下さい。
 (このシリーズの記事の目的は、審査基準を紹介し、商標登録出願を目指す場合のネーミングを決める参考となる情報を提供することです。)


<国旗、菊花紋章、勲章、褒章またば外国の国旗と同一または類似の商標(商標法4条1項及び3項)>

 4条1項は、国旗、菊花紋章、勲章、褒章又は外国の国旗と同一または類似の商標が登録を受けることができないものとして規定されています。
 4条1項の勲章、褒章、褒章、外国の国旗は、現に存在するものに限られています。
 ここで言う外国は、日本が承認していない国も含みます。

 商標(商品名、サービス名、ロゴ、トレードマークなど)の一部に国内外の国旗の図形を顕著に有する商標は、「国旗又は外国の国旗に類似するもの」として扱われます。
 菊花紋章に類似するものとして扱われる具体的な紋章については、商標審査基準「第3 第四条1項及び3項」の「一.第四条第1項第1号(国旗、菊花紋章等)をご確認下さい。

 なお。国内外の国旗の尊厳を害するような方法で表示した図形を有する商標は、たとえそれらの国旗と類似しなかったとしても、後述の公序良俗違反(4条1項7号の規定)に該当するものとされます。



<国の紋章、記章等(4条1項2号、3号、および5号)>

 商標法4条1項2号は、パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国または商標法条約の締約国の国旗を除く紋章や記章のうち、経済産業大臣が指定するものと同一または類似の商標が登録できない旨を規定しています
 尚、国旗と同一または類似の商標が登録できないことについては、前述の4条1項1号で規定されています。
 3号は国際連合その他の国際機関を表示する表彰のうち、経済産業大臣が指定するものと同一または類似の商標が登録できない旨を規定しています。
 5号は日本またはパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国、商標法条約の締約国の政府または地方公共団体の監督用または証明用の印象や記号のうち、経済産業大臣が指定するものと同一または類似の商標が登録できない旨を規定しています。

 審査基準には、商標法4条1項2号、3号、および5号の「経済産業大臣が指定するもの」の例示が掲載されています。



<赤十字等の標章または名称(4条1項4号)>

 4条1項4号は、赤十字の標章や名称などが商標として登録できない旨が規定されています。

(1)赤十字の標章および名称等の使用の制限に関する法律第1条の標章
・白地に赤十字
・白地に赤新月
・白地に赤のライオンおよび太陽

(2)赤十字の標章および名称等の使用の制限に関する法律第1条の名称
・「赤十字」
・「ジュネーブ十字」
・「赤新月」
・「赤のライオンおよび太陽」

(3)武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律第158条第1項の特殊商標
・オレンジ色地に頂点が図の上方にある青色の正三角形

 尚、(1)ないし(3)の標章または名称を商標の一部に顕著に記載されているとみなされる場合は、4条1項4号の規定に該当するとみなされます。



<国、地方公共団体等の著名な表彰(4条1項6号)>

 国や地方公共団体、公益に関する団体で営利を目的としないもの、公益に関する事業で営利を目的としないものを表示する著名な標章と同一または類似の商標は、4条1項6号の規定により商標登録ができません。
 審査基準には、このような商標の例示などが掲載されています。


 関連する審決:不服2011-2545(拒絶査定不服の審決)

 公益に関する団体であって、営利を目的としないものを表示する著名な略称と類似するとされたために拒絶されたものの、審決で査定が取り消されて商標登録された事例です。

 原査定では、本願商標「NHKCIS」(指定商品は第9類「配線付きハードディスクドライブ用サスペンション」)が日本放送協会の著名な略称である「NHK」を含んでいたことから、公益に関する団体であって営利を目的としないものを表示する著名な標章と類似の商標と認められ、商標法4条1項6号に該当すると認定、判断され、拒絶されました。

 審決の判断は、次のようなものでした。

・商標を構成する各文字は、同書、同大、等間隔に概観上一体的に表されている。
・構成全体から生じる「エヌエイチケーシーアイエス」の呼び方(呼称)も、さほど困難なく一連に呼称できる。

 という理由から、

・本願商標「NHKCIS」を見た人が、商標の構成中の「NHK」の文字部分が「日本放送協会」の略称としてただちに認識されるとはいいにくい。
・むしろ本願の構成文字全体をから、本願商標を見た人は特定の意味合いをもたない、一体不可分(「NHK」と「CIS」をわけて見ることができないという意味です)の造語を表したものと認識されるとみるのが相当。

 したがって、「NHKCIS」の文字から日本放送協会を連想、思いつく(想起)することはないので、本願商標は日本放送協会の著名な略称である「NHK」とは類似しないと判断されました。



<公序良俗違反(4条1項7号)>

 審査基準の扱いでは、公の秩序または善良の風俗を害するおそれがある商標は次の通りです。

・その(商標の)構成自体がきょう激、ひわい、差別的、もしくは他人に深いな印象を与えるような文字または図形である場合。
・商標の構成自体が公序良俗に反するものでなくても、指定商品または指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、または社会の一般的道徳観念に反するような場合。

 商標が「差別的、もしくは他人に不快な不快な印象を与えるような文字や図形」に該当するか否かは、その文字や図形にかかわる歴史的背景や社会的影響など、多面的な視野から判断します。

 著名な故人の名前や略称の使用(現存する人の名前の扱いは4条1項8号に規定されています)で後述の4条が4条1項7号の公序良俗違反に該当するとされた事例(不服2009−11621)については、後述の「関連する審決」で紹介する他、商標審査便覧の「歴史上の人物名(周知・著名な故人の人物名)からなる商標などをご確認下さい。
 尚、4条1項7号の公序良俗違反は商標そのものの性質に着目した規定です。審決や裁判例では、商標の登録出願が商道徳妥当性を欠く場合などの場合は、4条1項7号に該当しないと判断される場合があります(審決 無効2010-890101、知的財産高等裁判所平成23年(行ケ)第10104号判決、東京高等裁判所平成14年(行ケ)第616号判決、他)。


 関連する審決:不服2009−11621

 著名な故人の名前の著名な略称が、4条1項7号の公序良俗に該当するかが争われた事例です。

 出願人が「サガン」とカタカナで横書きした商標を出願したところ、「世界的に著名なフランス人小説家『フランソワーズ・サガン』の略称と認められるから、このような商標を一私人である出願人が自己の商標として使用することは、世界的に著名な故人の名声に便乗するものであって、ひいては故人の名声・名誉を傷つけるおそれがあり、国際信義に反することから、出願人がこれを商標として採択使用することは、公序良俗を害するおそれがあるものといえる。」という理由で拒絶されました。
 そのため出願人は不服の審判を請求、当審が証拠調べを行い、請求人(この場合は出願人)に対して証拠調べの結果を通知し、相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えました。

 当審の判断は、「『世界的に著名な者の著名な略称を、その死後、遺族等と何ら関係を有しない者が、遺族等の承諾を得ることなく、商標として指定商品について登録することは、世界的に著名な死者の著名な略称の名声に便乗し、指定商品についての使用の独占をもたらすことになり、故人の名声、名誉を傷つけるおそれがあるばかりでなく、公正な取引秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものとして、公の秩序又は善良の風俗を害するものといわざるを得ない。』と解される(同旨判決 東京高裁 平成13年(行ケ)第443号 平成14年7月31日判決参照)。」との観点から、本願商標が4条1項7号に該当するか否か

 その結果、

・本願商標「サガン」はカタカナ文字を横書きしているため、この文字は、著名な作家「サガン」の名前の略称を連想させるだけで、ほかの特定の意味を有する親しまれた語が思いつかず、本願商標「サガン」に接する取引者、需要者(消費者)は、同故人の著名な筆名の略称を表したものと理解、把握すると予想するのが妥当。

・請求人と故人(サガン)との関係について調べると、両者に何かの関係があると認められる証拠はなく、また、当該略称(サガン)の出願や登録について、請求人がサガンの遺族などから許可を得た者であるとはいえないため、請求人とサガンは全く関係ない者といわざるを得ない。

 という理由で、4条1項7号の公序良俗違反に該当すると判断されました。



<他人の氏名または名称等(4条1項8号)>
 次のものを含む商標は、4条1項8号で登録できない商標と規定されています。
 (ただしその他人の承諾を得ているものを除く)

(1)他人の肖像または他人の氏名
(2)他人の名称
(3)著名な雅号、芸名
(4)筆名
(5)(1)〜(4)の著名な略称

 ここでいう「他人」とは、現存する者です。
 外国人も含みます。
 自分の氏名等と他人の氏名等が一致するときは、その他人の承諾が必要とされます。

 「著名な雅号、芸名、筆名、著名な略称」の著名の程度の判断は、商品または役務との関係を考慮して行われます。



<博覧会の賞(4条1項9号)>

 国内外の博覧会の賞と同一または類似の標章をもつ商標は、登録できない商標の一つです。
 「博覧会」は、品評会などを含み、広く解釈されます。

 平成23年法律第63号により改正(平成23年6月8日に公布、平成24年4月1日より施行)され、博覧会の指定制度が廃止されました。
 これを受けて審査基準には、「政府等以外の者が開設する博覧会」について、特許庁長官が定める基準が明記され、政府など以外が主催する博覧会はその基準に適合するかが判断されるようになりました(平成24年特許庁告示6号)。

 審査基準に掲載されている4条1項9号の基準は、

(1)産業の発展に寄与することを目的とし、「博覧会」「見本市」等の名称の如何にかかわらず、産業に関する物品等の公開及び展示を行うものであること。

(2)開設地、開設機関、出品者及び入場者の資格、出品者数、ならびに出品物の種類及び数量等が、本号の趣旨に照らして適当であると判断されるものであること。

(3)政府等が協賛し、又は後援する博覧会その他これに準ずるものであること。



 このシリーズは、今後、不定期連載する予定です。
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