2013年03月24日

改正米国特許法と米国特許調査

【訂正・追記等】

 この記事は2013年3月13日に、「2.旧法・改正法の適用の判断と有効出願日」の記載内容に誤りがあったため、以下の訂正を行いました。

誤:クレームに係わる発明に対し、
正:出願された発明に対し、

誤:有効出願日が2013年3月16日以前のクレームに対しては
正:削除されたクレームを含め、有効出願日が2013年3月16日以前のクレームのみの特許出願に対しては

誤:有効出願日が2013年3月16日以降のクレームは、
正:削除されたクレームを含め、有効出願日が2013年3月16日以降のクレームを一つ以上含むの特許出願に対しては

 「2.旧法・改正法の適用の判断と有効出願日」について、2013年3月30日に改正法が適用される範囲についての説明を追記しました。

 2013年4月3日、誤解を防ぐ目的で以下の説明等の追記と修正を行いました。

・新規性及び非自明性の判断基準日がクレーム発明の有効出願日であるという説明を行う目的で、改正法100条(2)(j)、規則1.109、改正法102条、及び改正法103条に関する記述と説明を追記しました。

・修正前:「旧法・改正法の適用の判断と有効出願日」 → 修正後:「出願された特許及び特許に対する旧法・改正法の適用の判断と有効出願日



 2013年3月16日に米国の先願主義が施行されました。
 米国の特許調査に重要と思われるAIAセクション3に関連した、有効出願日、グレースピリオド、及びこれらに関連する新規性と非自明性に関する規定についてまとめましたので、少しずつブログにアップします。
 なお、くわしく知りたい方は後述の「参考資料」を参照することをお勧めします。
 万一、記載内容の誤り、法令等に関する不適切な記述がありましたら、大変お手数ですがぜひご指摘ください。

 米国の改正特許法の施行に伴い、特許調査で最も影響を受けることは、新規性(米国特許法102条)と非自明性(日本の特許法でいう進歩性に相当。米国特許法103条)の判断の基準日が「有効出願日」(effective filling date)になることだと思われます。



1.有効出願日の定義

 改正米国特許法(以下、「改正法」と記載)では、新規性と非自明性が各クレームの有効出願日に基づいて判断されます。
 この根拠となる条文と規則についてまとめてみました。

 「クレーム発明」とは、クレームで定義された発明のことで、改正法100条(2)(j)で以下のように定義されています(参考資料2)。

改正法100条(2)(j)
  文言「クレーム発明」とは、特許または特許出願におけるクレームにより定義された主題をいう。


 このように定義されたクレーム発明に対し、改正法では新規性と非自明性が有効出願日に基づいて判断されることが改正法102条と103条にそれぞれ規定されています(参考資料2)。


 改正法102条 特許要件;新規性

(a)新規性;先行技術
 次の各項の一に該当するときを除き、人は特許を受ける権利を有するものとする。
(1)クレームされた発明が、有効出願日前に特許されるか、または公然使用、販売、その他公衆に対し利用可能となった場合。
(2)クレームされた発明が米国特許法151条(特許の発行)の規定に基づき登録された特許に記載されているか、または、米国特許法122条(b)(特許出願の公開)の規定に基づき公開された出願に記載されており、かつ、クレームされた発明の有効出願日前に有効に出願されている場合。


 改正法103条 特許要件;自明でない主題

 発明が、同一のものとしては102条に規定した開示または記載されていない場合であっても、特許を受けようとするその主題と先行技術の差異が、クレーム発明の有効出願日前にその主題が全体として、当該主題が属する技術分野において通常の知識を有する者にとって自明であるような差異であるときは、特許を受けることができない。特許性は、発明の行われ方によっては否定されないものとする。


 では有効出願日とは、どのように定義されているのでしょうか。
 有効出願日は、改正法100条(i)(1)に次のように定義されています(参考資料1)。

100条(i)(1)
 特許又は特許出願においてクレームされた発明に対する「有効出願日」とは、 次に掲げるいずれかの日をいう。
(A)サブパラグラフ(B)が適用されない場合には、当該発明に対するクレームを含む特許又は特許出願の実際の出願日。
(B)特許または特許出願が、当該発明に関して米国特許法119条(a)(優先権主張、仮出願)、365条(a)(合衆国以外の国を指定国とする優先権)(b)[国際出願に基づ く優先権)、若しくは365条(b)(合衆国を指定国とする国際出願)に基づいて優先権を付与されたか、または120条(継続出願)、121条(分割出願)、若しくは365条(c)(合衆国を指定国とする国際出願の継続出願)に基づいて先の出願日の便益を受けた出願のうち、最も早い出願日。


 また、改正規則案1.109には、有効出願日について次の定義が記載されています。

 規則1.109 クレーム発明の有効出願日
(a)再発効出願または再発効特許を除く特許または特許出願のクレーム発明の有効出願日は、次の事項のうちの最先のものである。
(1)発明のクレームを含む特許または特許出願の実際の出願日。
(2)特許または出願が当該発明に関し、米国特許法119条、120条、121条、または365条に基づいて優先権を付与されたか、または先の出願日の利益を受けた最先の出願の出願日。
(b)再発行出願または再発行特許におけるクレーム発明に対する有効出願日は、当該発明に対するクレームが再発行しようとした特許に含まれていたとみなすことにより決定される。


 つまり、有効出願日とは、

@ パリ条約上の優先権を主張している場合は、そのクレームに係わる発明に関して優先権の基礎となる最先の出願日。

A 継続出願や分割出願等の場合は、そのクレームに係わる発明に関して出願日は遡及効果を得ることができる最先の出願日。

B 上記の@又はAに当てはまらない場合は、実際の米国への出願日。

 なお、有効出願日はクレーム毎に判断されるため、1つの出願でクレームにより有効出願日が異なるというケースが生じる可能性もあります(参考資料1、2)。



2.出願された特許及び特許に対する旧法・改正法の適用の判断と有効出願日

 特許出願に対し、改正前の米国特許法(以下、「旧法」と記載)が適用されるか、改正法が適用されるかについての判断も、有効出願日により行われます。

・削除されたクレームを含め、有効出願日が2013年3月16日以前のクレームのみの特許出願に対しては、旧法が適用されます。
・削除されたクレームを含め、有効出願日が2013年3月16日以降のクレームを一つ以上含む特許出願に対しては、当該のクレームが削除された場合を含み、先願主義の改正法が適用されます(参考資料1)。

 改正法が適用される範囲について、AIAセクション3では以下のように規定しています(参考資料2)。

(n)発効日
 (1)全般
 本セクションにおいて特に規定される場合を除き、本セクションによる改正は、本法律の制定日から18ヶ月が経過するとき(2013年3月16日)に効力を有するものとし、次に掲げるいずれかのものを含んでいる又はいずれかの時点で含んでいたことのある特許出願及び発行された特許に適用されるものとする。

(A) 米国特許法100条(i)に規定する有効出願日が本項において述べられた発効日(2013年3月16日)以降であるクレームされた発明に対するクレーム。

(B) そのようなクレームを含んでいたことのある特許、いずれかの時点で含んでいたことのある特許、又は特許出願に対する米国特許法120条(継続出願)、121条(分割出願)、又は365条(c)(国際出願における出願日の利益)による特定の参照。

 「いずれかの時点で含んでいたことのある特許」とは、有効出願日が発効日(2013年3月16日)以降のクレームが補正(継続出願や分割出願など)により削除された場合を意味します。
 つまり出願に対しては、有効出願日が3月16日以降であるクレームが一つでもあれば、または過去に有効出願日が3月16日以降のクレームが存在していた場合は、その出願には改正法が適用されます。

 なお、改正法202条と改正法103条が特許出願に対して適用されるとしても、以下の場合は旧法102条(g)が全てのクレームに対して適用されます(参考資料1)。

・出願が、2013年3月16日以前に生じた有効出願日を有するクレームを含むか、過去ある時点で含んでいた場合。
・出願が、2013年3月16日以前に生じた有効出願日を含むか、または過去のある時点において含んでいた継続出願、分割出願、または一部継続出願として、かつて指定されていた場合。



3.有効出願日と米国特許調査

 米国の特許調査を行う場合は、
@ 特許出願または特許の有効出願日を確認。
・優先権主張、継続出願、分割出願の有無を確認。
・旧法が適用されるか? 改正法が適用されるか? の判断。

A 先行例の調査範囲を決める
・改正法が適用される場合は、各クレーム発明の有効出願日以前に公開された文献を対象に調査する。
・旧法が適用される場合は、旧法102条(b)記載のいわゆる"1 year rule"(注)を考慮して先行例を調査する。



 実際に米国の特許調査を行う場合は、これ以外にグレースピリオドを考慮し、新規性喪失の例外となる先行例を引例として使用しないことも効果的な引例を見つけるためには有効な方法と思われます。
 グレースピリオドについては、次回のブログ記事にアップする予定です。

注:旧法102条(b)に特許を受けることができない発明として、「その発明が、合衆国における特許出願日前1年より前に、合衆国もしくは外国において特許を受けた、もしくは刊行物に記載されたか、または合衆国において公然実施もしくは販売された場合」と規定されている。



【参考資料】

参考資料1:「新旧対照 改正米国特許法実務マニュアル ―改正米国特許法、規則及びガイドラインの解説―」 河野英仁 経済産業調査会 2012年.

参考資料2:「米国の先願主義への移行における日本の出願人にとっての留意点」 森友宏 パテント Vol.66 2013.3 P1-P13.
posted by NEDS at 19:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 特許 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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