2014年02月16日

調査の目的を達成できる特許情報の条件とは?

前回の記事では,特許調査のときに何のために特許調査をするか? という調査の目的を考え,その調査の目的を達成できる特許情報の条件を考えるという話しを書きました。
 では,調査の目的を達成できる条件とは何でしょう?


1.審査請求前の先行例調査

 たとえば審査請求前の先行例調査の場合,

@ 調査の目的
 審査請求をするか否かの判断を行うために先行例の有無を調査する。

A 調査の目的を達成できる特許情報の条件
 審査で拒絶の理由として使われる可能性のある引例として,以下に記載した条文に該当する文献の有無を報告する。

 ・新規性を否定し得る文献(特許法29条1項各号)
 ・進歩性を否定し得る文献(特許法29条2項)
 ・拡大先願(特許法29条の2)
 ・先願(特許法39条)

 この場合,実際に審査官がどの文献を引例とするかを想定することは無理なので,審査で引例として用いられる可能性のある文献を網羅的に調査し,報告することが大切です。

 なお,今回のブログ記事では,実際の審査で新規性・進歩性,拡大先願,先願がそれぞれどのように判断されるか? などの説明は省略します。
 詳しく知りたい方は,「特許・実用新案 審査基準」(HTML版 https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/tukujitu_kijun/hypertext.html)を参照してください。


2.無効資料調査

 無効資料調査の場合はどうでしょうか?
 特許無効審判による特許の無効化の場合,特許無効審判を請求することができる特許の条件が特許法123条1項各号に記載されています。
 123条1項2号の記載を読むと,先行例によって特許を無効化する場合に関連する条文は29条1項各号の新規性または2項の進歩性,29条の2(拡大先願),39条(先願)であることがわかります。
 そのため,無効資料調査では調査対象の特許の新規性または進歩性を否定できる文献,拡大先願や先願となる記載内容を見つけることが調査の目的を達成できる特許情報になります。

 特許侵害訴訟で被告が無効の抗弁をする場合も特許法104条の31項の規定に基づき,無効審判による特許の無効化と同じ考え方で無効資料調査をします。

【参考】
(特許無効審判)
第百二十三条  特許が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許を無効にすることについて特許無効審判を請求することができる。この場合において、二以上の請求項に係るものについては、請求項ごとに請求することができる。
一  その特許が第十七条の二第三項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願(外国語書面出願を除く。)に対してされたとき。
二  その特許が第二十五条、第二十九条、第二十九条の二、第三十二条、第三十八条又は第三十九条第一項から第四項までの規定に違反してされたとき(その特許が第三十八条の規定に違反してされた場合にあつては、第七十四条第一項の規定による請求に基づき、その特許に係る特許権の移転の登録があつたときを除く。)。
三  その特許が条約に違反してされたとき。
四  その特許が第三十六条第四項第一号又は第六項(第四号を除く。)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたとき。
五  外国語書面出願に係る特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないとき。
六  その特許がその発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたとき(第七十四条第一項の規定による請求に基づき、その特許に係る特許権の移転の登録があつたときを除く。)。
七  特許がされた後において、その特許権者が第二十五条の規定により特許権を享有することができない者になつたとき、又はその特許が条約に違反することとなつたとき。
八  その特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正が第百二十六条第一項ただし書若しくは第五項から第七項まで(第百三十四条の二第九項において準用する場合を含む。)又は第百三十四条の二第一項ただし書の規定に違反してされたとき。
2  特許無効審判は、何人も請求することができる。ただし、特許が前項第二号に該当すること(その特許が第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第六号に該当することを理由とするものは、当該特許に係る発明について特許を受ける権利を有する者に限り請求することができる。
3  特許無効審判は、特許権の消滅後においても、請求することができる。
4  審判長は、特許無効審判の請求があつたときは、その旨を当該特許権についての専用実施権者その他その特許に関し登録した権利を有する者に通知しなければならない。

第百四条の三  特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により又は当該特許権の存続期間の延長登録が延長登録無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者又は専用実施権者は、相手方に対しその権利を行使することができない。


3.侵害回避調査

 では,侵害回避調査の場合は?
 侵害回避調査は,自社で製造,販売,譲渡,輸入,譲渡または輸入の申し出,etc.をする製品(特許法101条各号参照)が,他社の特許権を侵害する可能性を調べることを目的に行います。
 特許権の侵害は,対象となる製品が特許権の権利範囲(請求項記載の発明)に含まれるか? で判断されるため,侵害回避調査の目的を達成できる特許情報は,自社の技術を権利範囲に含む他社の特許の有無と,もし自社の技術を権利範囲に含む特許があった場合にはその特許権に関する情報です。

 特許権の侵害は,具体的には請求項記載の発明と製品をそれぞれ構成要素にわけ,対比し,製品が請求項記載の発明の構成要素を全て含むか否かで判断します(参考:特許法第70条)。
 侵害回避調査では,自社の製品が他社の特許権の権利範囲に含まれる可能性を調べるわけですから,自社製品に関する特許文献を調査し,抽出した公報の請求項記載の発明と自社の製品を構成要素に分けて対比し,自社の製品の技術が他社の特許権の権利範囲に含まれる可能性を検討します。
 この場合,製品の仕様変更や改良をする可能性,判断のミスを避けるなどの理由で,自社の製品が他社の請求項記載の発明の構成要素を全て含まない場合でも技術的に近い特許についても抽出することが望ましいと私は考えています。

 詳細については別の機会に改めて書きますが,侵害回避調査は「自社の製品や技術が将来他社の特許権を侵害する可能性」を想定するため,登録された特許だけでなく,審査されていない公開公報や拒絶や取り下げが確定していない公報にも注意が必要です。


4.技術情報収集のための調査
 技術情報収集のための調査は,権利としての特許とは関係なく,技術の内容が重要な調査です。
 自社の製品開発や参入する市場に関連する技術を含む特許文献に記載された情報が,調査の目的を達成するための特許情報です。



 万一,記載内容の誤りや不明な点,事実と異なる記載等がありましたら,お手数ですがご指摘を賜れますようお願い申し上げます。
posted by NEDS at 21:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 調査 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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