2014年04月19日

本の紹介 「特許法 第二版」(中山信弘 著 弘文堂 平成24年9月15日)

 「特許法 第二版」(中山信弘 著 弘文堂 平成24年9月15日)の紹介です。



 この本は特許法に関する解説がまとめられており,平成23年改正を含めた特許制度や特許法について専門的に学ぶことができました。
 第1編の序章には工業所有権法とそれに関連する法分野についての概要が書かれており,第2章に国内外の工業所有権法の歴史,第2編以下に特許法に関する解説が書かれています。


 特許調査を行う際に理解しておいた方がよいと思われる記述が多数あったため,この本から学んだことのメモの一部をまとめました。

 矢印以下が特許調査で役立つと思われたために書いた私のメモです。


・職務発明に関して,「現行法では過去の職務に属する発明も職務発明となる。ここでいう過去の職務とは,発明当時勤務していた組織内での過去の職務であり,退職後の発明は職務発明とはならないと解すべきである。」(60ページ)
→ 発明者について調査を行う場合には,その発明者が発明した技術が現在の勤務先や職務の内容とは関連がない場合もあるので注意する。


・発明の種類に関して,「先後願の判定においても,技術的思想が同一である限り,クレームの記載上,方法発明と物の発明に違いがあっても,同一と認める妨げとはならない。」(114ページ)
→ 特許調査を行う際に,発明の種類(物の発明,方法の発明)の違いにこだわってはいけない。


・拡大先願に関して,「後願の排除は,最初に添付した明細書等に限定されており,出願後に補正により追加されたものは含まれない。」(131ページ)
→ 拡大先願を理由に特許文献を無効資料とする際には,最初に添付した明細書を引例とする。


・特許法29条の2と39条の後願を排斥しうる範囲の違い。(132ページ)

 時間的範囲:29条の2は後願の出願日前の出願についての規定。
       39条は同日出願にも適用がある。

 物的範囲:29条の2は先願の願書に最初に添付した明細書等(外国語書面を含む),実用新案請求の範囲または図面。
      39条は確定した特許請求の範囲に限定される。


・後願を排斥できる条件の違い。(132ページ)
 39条は,先願の取り下げ,放棄,却下,拒絶査定・審決が確定したときは後願を排除することができない(最初からなかったものとみなされる)。
 29条の2では特許出願が最初からなかったものとみなされた場合に後願を排除できなくなることはない。
 29条の2は,先願と後願の発明者が同一人である場合には適用されない。
 39条は,先願と後願の発明がが同一人である場合に適用されないという限定はないが(第5項),先願が冒認出願である場合には先願の違いはなくならない(平成23年改正39条6項)。
→ 29条の2と39条の違いに注意。

・29条の2と39条に関して,「以上のような差異はあるものの,事実上,先願の利用の多くは29条の2で処理されているが双方の条件を満たす場合も多く,いずれかの条文を適用して拒絶すればよい。」(132ページ〜133ページ)

 関連:後述の国内優先権主張を伴った出願については,出願日から1年3ヶ月を経過すると取り下げたものとみなされ(42条),先願の地位が失われるため,拡大先願が認められる(41条3項)。(208ページ)


・パリ条約の4条Bの優先権に関して,「わが国への出願明細書に記載されている発明で,第一国出願の明細書に記載されている発明については,第一国の出願日を公知の擬制日とされている。」(133ページ)
→ パリ条約ルートで日本へ出願された引例があった場合は,第一国の出願日を確認する。


・仮専用実施権(34条の2)に関して,「平成20年改正で,特許を受ける権利を有する者は,特許を受ける権利に基づいて取得すべき特許権につき願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲,または図面に記載した事項の範囲内において,仮専用実施権を設定することができるようになった。」(161ページ)
→ 侵害回避調査では仮専用実施権にも注意。
  仮通常実施権(34条の3 161ページ〜162ページ)も同様。


・国内優先権主張に関して,「国内優先権主張の基礎とされた先の出願の願書に添付した明細書,特許(実用)新案請求の範囲または図面(外国語書面出願では外国語書面)に記載されている発明については,特許要件の判断の時点につき,優先権の主張ができる(41条2項)。優先権の判断は請求項ごとに行われ,請求項ごとに特許要件の判断時が異なることになる。」(205ページ)
→ 調査対象の発明の国内優先権主張と調査対象の期間に注意する。


・国内優先権主張に関して,「国内優先権の主張を伴った出願が公開された場合には,先の出願にも拡大された先願の地位が認められる(41条3項)。」
関連:先願と拡大先願(132ページ〜133ページ)


 以上はあくまでも私のメモの一部です。
 これら以外にも,無効資料調査を行う場合は袋包禁反言を意識して可能な範囲で袋包を確認した方がより確実な引例を探すためのヒントが得られるとか,39条5項に基づき特許出願を放棄した者がもう一度出願した場合に放棄した出願が公開されていない限り自分の先願により拒絶されないこと,新規性や進歩性などなど,この本から多くの特許調査のノウハウや考え方を学ぶことができました。
posted by NEDS at 23:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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