特許協力条約(PCT)の学習した際の優先権、国際調査、国際公開についてのメモ書きをブログにアップしました。
特許調査等で国際出願の明細書等、国際調査報告書を確認する際にご活用ください。
記載内容に誤り等がありましたら、ぜひともご指摘頂けますようお願いいたします。
参考資料
・令和元年度知的財産権制度説明会(実務者向け)テキスト 国際調査及び国際予備審査(特許庁 令和元年度)
・国際調査及び国際予備審査 平成30年度知的財産権制度説明会(実務者向け)スライド
https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/chosa-shinsa/document/index/jitsumu_shiryo.pdf
・特許協力条約
https://www.wipo.int/export/sites/www/pct/ja/docs/pct.pdf
・特許協力条約に基づく規則(2020年7月1日発効)
https://www.wipo.int/export/sites/www/pct/ja/texts/pdf/pct_regs.pdf
優先権主張
・日本国では、自己指定された国際出願における優先権主張は、国内優先権の主張(特許法41条)として扱われる。
・日本国でした先の出願を優先権主張の基礎とする国際出願において、出願人が先の出願によって日本国での権利取得を希望する場合。
→ 願書において日本国の指定を除外するか、または先の出願がみなし取下げとなる前に日本国の指定を取り下げる。
※調査では、日本国でした先の出願を優先権主張の基礎とする国際出願で日本が指定国に含まれていない場合、先の出願で権利取得を目指している可能性に注意。
優先日
・PCTでは、優先権主張を伴う場合の優先日は「優先権主張の基礎となる出願の出願日」、優先権主張を伴わない場合の優先日は「国際出願日」。
国際出願が一の優先権主張を伴う→ 優先日=優先権の主張の基礎となる出願の出願日
国際出願が二以上の優先権主張を伴う→ 優先日=優先権の主張の基礎となる出願のうち最先の出願日
国際出願が優先権主張を伴わない→ 優先日=国際出願日
※調査では、優先権主張の有無を把握して優先日を確認すること!
国際調査の先行技術調査において発見すべき文献
・調査対象とした全ての請求項に対し、新規性及び進歩性についての見解の根拠となる先行技術を提示。
・「先行技術」とは、世界のいずれかの場所において、新規性・進歩性の判断において基準日前に、書面による開示(図面その他の図解を含む)によって公衆が利用可能となった全てのものを意味する。
国際調査報告(ISR)の引用文献のカテゴリー
「X」特に関連のある文献であって、当該文献のみで発明の新規性又は進歩性がないと考えられるもの
「Y」特に関連のある文献であって、当該文献と他の1以上の文献との、当業者にとって自明である組合せに
よって進歩性がないと考えられるもの
「A」特に関連のある文献ではなく、一般的技術水準を示すもの
「E」国際出願日前の出願または特許であるが、国際出願日以後に公表されたもの
→ ISA見解書のV欄においては、見解の根拠となる先行技術文献としては使用できない。
「L」優先権主張に疑義を提起する文献又は他の文献の発行日若しくは他の特別な理由を確立するために引用する文献(理由を付す)
「O」口頭による開示、使用、展示等に言及する文献
→ ISA見解書のV欄においては、見解の根拠となる先行技術文献としては使用できない。
「P」国際出願日前で、かつ優先権の主張の基礎となる出願
の日の後に公表された文献
→ 必ずしも見解の根拠となる先行技術文献として使用できるとは限らない。
「T」国際出願日又は優先日後に公表された文献であって出願と矛盾するものではなく、発明の原理又は理論の理解のために引用するもの
「&」同一パテントファミリー文献
EX文献が国際公開で、その国際公開により公開された以下のような国際出願は、特許法29条の2に基づく拒絶理由の根拠となり得る。
・日本語でされた国際出願のうち、指定国として日本国を含むもの。
・外国語でされた国際出願のうち、指定国として日本国を含み、かつ、所定期間内に明細書及び請求の範囲の翻訳文が提出されたもの。
国際公開
・国際公開では、国際出願の明細書等とともにISRも公開される。
・国際出願は、原則として優先日から18月を経過した後速やかに国際事務局(IB)によって公開される。
・出願人は、優先日から18月の経過前に早期公開をIBに請求できる。
・優先日から18月を経過した時に、国際出願の指定国に国際公開を行う必要がないことを宣言している国(PCT締約国でこの宣言を行っている国は米国のみ)のみが含まれている場合は、当該国際出願の国際公開は行われない。
※調査では、国際公開されない国際出願がある可能性に注意。
・英語以外の言語で国際公開される場合、ISR(又はISRを作成しない旨の宣言)、発明の名称、要約及び要約とともに公表される図に係る文言は、当該言語及び英語の双方で国際公開が行われる。
国際公開番号の文献種別
A1:国際出願及びISRの公開
A2:国際出願の公開(ISRなし又はISRを作成しない旨の宣言)
A3:国際公開(A2)後のISRの公開(表紙を改訂)
A4:国際公開後の19条補正書及び19条補正についての説明書の公開(表紙を改訂)
A8:国際出願の公開(書誌事項の訂正のため再公開)
A9:国際出願又はISRの公開(訂正、変更又は補充のため再公開)
参考 19条補正
出願人はISRを受け取った後、所定の期間内に1回に限り、請求の範囲について補正をすることができる(PCT19条)。
日本における国際公開の効果
日本国においては、保証金請求権(特許法184条の10)に関して、以下の場合に国内出願の出願公開と同一の効果が生じる。
・日本語特許出願(日本語でされた国際特許出願)→ 国際公開があったとき。
・外国語特許出願(外国語でされた国際特許出願、特許法184条の4第1項)→ 国内公表があったとき。
※ 日本国内の侵害予防調査では、日本が指定国に含まれる国際公開にも注意する!
参考 国際特許出願
特許法184条の3第1項の規定により日本国における特許出願とみなされた国際出願を国際特許出願という(184条の3第2項)。