前回に引き続き、商標法4条1項1号〜4条1項9号に関する商標審査基準の内容をまとめてみました。
商標法4条では、「商標登録を受けることができない商標」が規定されています。
商品名、サービス名、ブランド名などの商標登録出願を目指す場合に、拒絶されにくいネーミングを考えるヒントにどうぞ。
このブログにまとめた商標審査基準の詳細は、「商標審査基準(改定第10版)」(http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/kijun/kijun2/syouhyou_kijun.htm)に掲載されています。
商標法の条文は、http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S34/S34HO127.html に掲載されています。
平成23年の商標法の改正(平成23年法律第63号)についての解説は、平成23年法律改正(平成23年法律第63号)解説書の第11章(http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/hourei/kakokai/tokkyo_kaisei23_63.htm)に掲載されています。
この改正に伴う商標審査基準の改正(平成24年4月1日より施行)の説明は、特許庁のサイト(http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/t_torikumi/shinsa_kijun_kaisei.htm)
に掲載されています。
商標法の審査基準や条文などを読むときは、「商標」の意味に注意してください。
ここでいう「商標」とは、商標登録出願をしていない商品名、サービス名、ロゴ、トレードマークなどを含みます。
「商標」を登録出願して、審査を経て登録された商標を「登録商標」といいます。
尚、このシリーズのブログ記事では、条文や審査基準等の意図を損なわない範囲で、簡易的な表現で記述することを心がけています。
内容の誤りや誤解を招く表現等がありましたら、大変お手数ですがご連絡下さい。
また、明細書作成や出願のご依頼は、弁理士さんや弁護士さんへご相談下さい。
(このシリーズの記事の目的は、審査基準を紹介し、商標登録出願を目指す場合のネーミングを決める参考となる情報を提供することです。)
<国旗、菊花紋章、勲章、褒章またば外国の国旗と同一または類似の商標(商標法4条1項及び3項)>
4条1項は、国旗、菊花紋章、勲章、褒章又は外国の国旗と同一または類似の商標が登録を受けることができないものとして規定されています。
4条1項の勲章、褒章、褒章、外国の国旗は、現に存在するものに限られています。
ここで言う外国は、日本が承認していない国も含みます。
商標(商品名、サービス名、ロゴ、トレードマークなど)の一部に国内外の国旗の図形を顕著に有する商標は、「国旗又は外国の国旗に類似するもの」として扱われます。
菊花紋章に類似するものとして扱われる具体的な紋章については、商標審査基準「第3 第四条1項及び3項」の「一.第四条第1項第1号(国旗、菊花紋章等)をご確認下さい。
なお。国内外の国旗の尊厳を害するような方法で表示した図形を有する商標は、たとえそれらの国旗と類似しなかったとしても、後述の公序良俗違反(4条1項7号の規定)に該当するものとされます。
<国の紋章、記章等(4条1項2号、3号、および5号)>
商標法4条1項2号は、パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国または商標法条約の締約国の国旗を除く紋章や記章のうち、経済産業大臣が指定するものと同一または類似の商標が登録できない旨を規定しています
尚、国旗と同一または類似の商標が登録できないことについては、前述の4条1項1号で規定されています。
3号は国際連合その他の国際機関を表示する表彰のうち、経済産業大臣が指定するものと同一または類似の商標が登録できない旨を規定しています。
5号は日本またはパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国、商標法条約の締約国の政府または地方公共団体の監督用または証明用の印象や記号のうち、経済産業大臣が指定するものと同一または類似の商標が登録できない旨を規定しています。
審査基準には、商標法4条1項2号、3号、および5号の「経済産業大臣が指定するもの」の例示が掲載されています。
<赤十字等の標章または名称(4条1項4号)>
4条1項4号は、赤十字の標章や名称などが商標として登録できない旨が規定されています。
(1)赤十字の標章および名称等の使用の制限に関する法律第1条の標章
・白地に赤十字
・白地に赤新月
・白地に赤のライオンおよび太陽
(2)赤十字の標章および名称等の使用の制限に関する法律第1条の名称
・「赤十字」
・「ジュネーブ十字」
・「赤新月」
・「赤のライオンおよび太陽」
(3)武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律第158条第1項の特殊商標
・オレンジ色地に頂点が図の上方にある青色の正三角形
尚、(1)ないし(3)の標章または名称を商標の一部に顕著に記載されているとみなされる場合は、4条1項4号の規定に該当するとみなされます。
<国、地方公共団体等の著名な表彰(4条1項6号)>
国や地方公共団体、公益に関する団体で営利を目的としないもの、公益に関する事業で営利を目的としないものを表示する著名な標章と同一または類似の商標は、4条1項6号の規定により商標登録ができません。
審査基準には、このような商標の例示などが掲載されています。
関連する審決:不服2011-2545(拒絶査定不服の審決)
公益に関する団体であって、営利を目的としないものを表示する著名な略称と類似するとされたために拒絶されたものの、審決で査定が取り消されて商標登録された事例です。
原査定では、本願商標「NHKCIS」(指定商品は第9類「配線付きハードディスクドライブ用サスペンション」)が日本放送協会の著名な略称である「NHK」を含んでいたことから、公益に関する団体であって営利を目的としないものを表示する著名な標章と類似の商標と認められ、商標法4条1項6号に該当すると認定、判断され、拒絶されました。
審決の判断は、次のようなものでした。
・商標を構成する各文字は、同書、同大、等間隔に概観上一体的に表されている。
・構成全体から生じる「エヌエイチケーシーアイエス」の呼び方(呼称)も、さほど困難なく一連に呼称できる。
という理由から、
・本願商標「NHKCIS」を見た人が、商標の構成中の「NHK」の文字部分が「日本放送協会」の略称としてただちに認識されるとはいいにくい。
・むしろ本願の構成文字全体をから、本願商標を見た人は特定の意味合いをもたない、一体不可分(「NHK」と「CIS」をわけて見ることができないという意味です)の造語を表したものと認識されるとみるのが相当。
したがって、「NHKCIS」の文字から日本放送協会を連想、思いつく(想起)することはないので、本願商標は日本放送協会の著名な略称である「NHK」とは類似しないと判断されました。
<公序良俗違反(4条1項7号)>
審査基準の扱いでは、公の秩序または善良の風俗を害するおそれがある商標は次の通りです。
・その(商標の)構成自体がきょう激、ひわい、差別的、もしくは他人に深いな印象を与えるような文字または図形である場合。
・商標の構成自体が公序良俗に反するものでなくても、指定商品または指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、または社会の一般的道徳観念に反するような場合。
商標が「差別的、もしくは他人に不快な不快な印象を与えるような文字や図形」に該当するか否かは、その文字や図形にかかわる歴史的背景や社会的影響など、多面的な視野から判断します。
著名な故人の名前や略称の使用(現存する人の名前の扱いは4条1項8号に規定されています)で後述の4条が4条1項7号の公序良俗違反に該当するとされた事例(不服2009−11621)については、後述の「関連する審決」で紹介する他、商標審査便覧の「歴史上の人物名(周知・著名な故人の人物名)からなる商標などをご確認下さい。
尚、4条1項7号の公序良俗違反は商標そのものの性質に着目した規定です。審決や裁判例では、商標の登録出願が商道徳妥当性を欠く場合などの場合は、4条1項7号に該当しないと判断される場合があります(審決 無効2010-890101、知的財産高等裁判所平成23年(行ケ)第10104号判決、東京高等裁判所平成14年(行ケ)第616号判決、他)。
関連する審決:不服2009−11621
著名な故人の名前の著名な略称が、4条1項7号の公序良俗に該当するかが争われた事例です。
出願人が「サガン」とカタカナで横書きした商標を出願したところ、「世界的に著名なフランス人小説家『フランソワーズ・サガン』の略称と認められるから、このような商標を一私人である出願人が自己の商標として使用することは、世界的に著名な故人の名声に便乗するものであって、ひいては故人の名声・名誉を傷つけるおそれがあり、国際信義に反することから、出願人がこれを商標として採択使用することは、公序良俗を害するおそれがあるものといえる。」という理由で拒絶されました。
そのため出願人は不服の審判を請求、当審が証拠調べを行い、請求人(この場合は出願人)に対して証拠調べの結果を通知し、相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えました。
当審の判断は、「『世界的に著名な者の著名な略称を、その死後、遺族等と何ら関係を有しない者が、遺族等の承諾を得ることなく、商標として指定商品について登録することは、世界的に著名な死者の著名な略称の名声に便乗し、指定商品についての使用の独占をもたらすことになり、故人の名声、名誉を傷つけるおそれがあるばかりでなく、公正な取引秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものとして、公の秩序又は善良の風俗を害するものといわざるを得ない。』と解される(同旨判決 東京高裁 平成13年(行ケ)第443号 平成14年7月31日判決参照)。」との観点から、本願商標が4条1項7号に該当するか否か
その結果、
・本願商標「サガン」はカタカナ文字を横書きしているため、この文字は、著名な作家「サガン」の名前の略称を連想させるだけで、ほかの特定の意味を有する親しまれた語が思いつかず、本願商標「サガン」に接する取引者、需要者(消費者)は、同故人の著名な筆名の略称を表したものと理解、把握すると予想するのが妥当。
・請求人と故人(サガン)との関係について調べると、両者に何かの関係があると認められる証拠はなく、また、当該略称(サガン)の出願や登録について、請求人がサガンの遺族などから許可を得た者であるとはいえないため、請求人とサガンは全く関係ない者といわざるを得ない。
という理由で、4条1項7号の公序良俗違反に該当すると判断されました。
<他人の氏名または名称等(4条1項8号)>
次のものを含む商標は、4条1項8号で登録できない商標と規定されています。
(ただしその他人の承諾を得ているものを除く)
(1)他人の肖像または他人の氏名
(2)他人の名称
(3)著名な雅号、芸名
(4)筆名
(5)(1)〜(4)の著名な略称
ここでいう「他人」とは、現存する者です。
外国人も含みます。
自分の氏名等と他人の氏名等が一致するときは、その他人の承諾が必要とされます。
「著名な雅号、芸名、筆名、著名な略称」の著名の程度の判断は、商品または役務との関係を考慮して行われます。
<博覧会の賞(4条1項9号)>
国内外の博覧会の賞と同一または類似の標章をもつ商標は、登録できない商標の一つです。
「博覧会」は、品評会などを含み、広く解釈されます。
平成23年法律第63号により改正(平成23年6月8日に公布、平成24年4月1日より施行)され、博覧会の指定制度が廃止されました。
これを受けて審査基準には、「政府等以外の者が開設する博覧会」について、特許庁長官が定める基準が明記され、政府など以外が主催する博覧会はその基準に適合するかが判断されるようになりました(平成24年特許庁告示6号)。
審査基準に掲載されている4条1項9号の基準は、
(1)産業の発展に寄与することを目的とし、「博覧会」「見本市」等の名称の如何にかかわらず、産業に関する物品等の公開及び展示を行うものであること。
(2)開設地、開設機関、出品者及び入場者の資格、出品者数、ならびに出品物の種類及び数量等が、本号の趣旨に照らして適当であると判断されるものであること。
(3)政府等が協賛し、又は後援する博覧会その他これに準ずるものであること。
このシリーズは、今後、不定期連載する予定です。
2012年07月25日
2012年07月20日
商標登録を目指す場合のネーミング 第1回 商標法3条1項及び2項に関する審査基準
商品名やサービス名を商標登録したい。
ドメイン名を商標登録したい。
このような場合、どんなネーミングやドメイン名ならば商標登録できるのでしょうか?
今回のシリーズは、商標審査基準を読み、商標登録されやすいネーミングの考え方を学ぶことがテーマです。
商品名、サービス名、ブランド名などは、コンセプト、理念、イメージ、品質などといったものから考えることが多いと思います。
一方、商標登録を目指す場合には、審査で拒絶されにくいネーミングを考えるのも、時間的、コスト的に効率が良い方法です。
そのため、商品名、サービス名、ブランド名などの商標登録を予定している場合は、ブランド戦略の視点だけでネーミングを考えるのではなく、商標の審査基準を考慮したネーミングを考えるのも一つの方法と思われました。
このような理由から、審査基準を読み、商標登録を目指す場合のネーミングを考えるときに参考になる記載をまとめてみました。
ブランディングやネーミングの参考としてお読み下さい。
尚、今回参考にした資料は、「商標審査基準(改定第10版)」(http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/kijun/kijun2/syouhyou_kijun.htm)です。
商標法の条文は、http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S34/S34HO127.html に掲載されています。
さらに詳しく知りたい方は、次の資料を読むことをお勧めします。
・商標審査便覧
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/kijun/kijun2/syouhyoubin.htm
・類似商品・役務審査基準(国際分類第10版対応)
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/kijun/kijun2/ruiji_kijun10.htm
尚、今回のシリーズで紹介するネーミングのヒントは、あくまでも商標審査基準の視点からまとめたものに過ぎません。
実際に知財の現場では、冗長な商標を避けるなどといったノウハウもありますので注意して下さい。
今回のブログ記事では、条文や審査基準の意図を損なわない範囲で、簡易的な表現で記述することを心がけました。
内容の誤りや誤解を招く表現等がありましたら、大変お手数ですがご連絡下さい。
<商標法第3条1項>
商標法3条1項は、商標登録の要件に関する条文です。
3条1項で規定されている登録できない商標には、次のようなものがあります。
(1)その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章(言葉や名前)のみからなる商標(一般的な名前の他、略称や俗称も含まれます)
(2)慣用されている商標(3条1項2号)
(3)商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、(包装を含む)形状など(3条1項3号)
・図形や立体的な形で商品の産地、販売地、品質、生産などを表示する商標も該当します。
・国の名前、地名、繁華街、地図などは、原則として商品の産地もしくは販売地または役務の提供の場所を表示するものとされます。
・指定商品(出願時に商標の使用をするものとして指定する商品)の品質、効能、用途などを間接的に表示する商標は、3条1項3号に該当しないものとされます。指定役務についても同様の扱いです。
(4)ありふれた氏または名称(3条1項4号)
(5)極めて簡単で、かつ、ありふれた標章(3条1項5号)
(6)3条1項1号〜5号までに該当するものの他、需要者が誰の業務の商品やサービスかを認識できないもの。
需要者とは、その商品やサービスを利用する人達という意味です。
ありふれたネーミングや一般的に使用されている言葉などが該当します。、
出版物やメディアの名称は3条1項3号の審査基準でどのように扱われるかと言うと、
・書籍の題号:題号がただちに特定の内容を表示するものとして認められるときは、品質を表示するものとする。
・新聞や雑誌などの定期刊行物の題号:原則として、自他商品の識別力があるものとする。
・フィルム、CDなどの題名:題名がただちに特定の内容を表示するものと認められる場合は、品質を表示するものとする。
・放送番組名:番組名がただちに特定の内容を表示すると認められるときは、役務の質を表示するものとする。
飲食店の屋号などの場合は、国の名前や地名などが特定の料理(例えばフランス料理、イタリア料理、北京料理など)を表示すると認められるときは、その役務の質を表示するものとされます。
屋号やネット販売などの小売等のサービス(役務)の場合、商標が取り扱い商品を表示すると認められるときは、その役務の「提供の用に供する物」を表示するものとされます。
尚、3条1項の規定による「商標登録を受けることができるかどうか」が判断されるのは、査定(ここで言う「査定」は、「商標登録の査定」という意味です)のときです。
そのため、ネーミング(商標)を考えた当時は商品やサービスに対してその呼び方を誰もしてなかったけど、今は俗称や慣用的な名前として使われている、といったネーミングを商標出願したい、といった場合には注意が必要です。
余談ですが、方言を使ったネーミングはどうなのか?
審決や裁判例を見ると、造語として扱われるケースがあるようです。
<商標法3条2項>
3条2項は、使用により識別力が生じた商標について規定されています。
3条1項3号〜5号に該当する商標であっても、商標を使った結果、特定の者の出所表示として、その商品やサービスのユーザーの間で全国的に認識されたものについては商標登録を受けることができると規定されています。
ただし、3条2項を適用して登録が認められるのは、出願された商標と使用されている商標が同一で、指定商品や指定役務と使用されている商品やサービスが同一の場合のみです。
そのため出願された商標と使用されている商標に違いがあれば、使用により識別力を有するに至った商標とは認められません。
ただし、出願した商標と使用した商標が、概観において同視できる程度に商標としての同一性を損なわないと認められるとき(明朝体とゴシック体の違い、縦書きと横書きの違いなど)は、3条2項の判断で考慮されます。
尚、商標が使用により識別力を有したかどうかの判断と証拠は、3条2項に関する審査基準に掲載されています。
<まとめ>
商標法3条1項に基づいて商標登録されやすいネーミングを考えるときは、
・商品やサービスそのものに使われている言葉、慣用表現、俗称、略称、産地、原材料、効能、用途、などのみから成るネーミングを避ける。
・ありふれた名称を普通に用いられる方法で表示したネーミングを避ける。
などといったところでしょうか。
次回のブログでは、商標の不登録事由が書かれた、商標法4条に関する審査基準を紹介します。
ドメイン名を商標登録したい。
このような場合、どんなネーミングやドメイン名ならば商標登録できるのでしょうか?
今回のシリーズは、商標審査基準を読み、商標登録されやすいネーミングの考え方を学ぶことがテーマです。
商品名、サービス名、ブランド名などは、コンセプト、理念、イメージ、品質などといったものから考えることが多いと思います。
一方、商標登録を目指す場合には、審査で拒絶されにくいネーミングを考えるのも、時間的、コスト的に効率が良い方法です。
そのため、商品名、サービス名、ブランド名などの商標登録を予定している場合は、ブランド戦略の視点だけでネーミングを考えるのではなく、商標の審査基準を考慮したネーミングを考えるのも一つの方法と思われました。
このような理由から、審査基準を読み、商標登録を目指す場合のネーミングを考えるときに参考になる記載をまとめてみました。
ブランディングやネーミングの参考としてお読み下さい。
尚、今回参考にした資料は、「商標審査基準(改定第10版)」(http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/kijun/kijun2/syouhyou_kijun.htm)です。
商標法の条文は、http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S34/S34HO127.html に掲載されています。
さらに詳しく知りたい方は、次の資料を読むことをお勧めします。
・商標審査便覧
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/kijun/kijun2/syouhyoubin.htm
・類似商品・役務審査基準(国際分類第10版対応)
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/kijun/kijun2/ruiji_kijun10.htm
尚、今回のシリーズで紹介するネーミングのヒントは、あくまでも商標審査基準の視点からまとめたものに過ぎません。
実際に知財の現場では、冗長な商標を避けるなどといったノウハウもありますので注意して下さい。
今回のブログ記事では、条文や審査基準の意図を損なわない範囲で、簡易的な表現で記述することを心がけました。
内容の誤りや誤解を招く表現等がありましたら、大変お手数ですがご連絡下さい。
<商標法第3条1項>
商標法3条1項は、商標登録の要件に関する条文です。
3条1項で規定されている登録できない商標には、次のようなものがあります。
(1)その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章(言葉や名前)のみからなる商標(一般的な名前の他、略称や俗称も含まれます)
(2)慣用されている商標(3条1項2号)
(3)商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、(包装を含む)形状など(3条1項3号)
・図形や立体的な形で商品の産地、販売地、品質、生産などを表示する商標も該当します。
・国の名前、地名、繁華街、地図などは、原則として商品の産地もしくは販売地または役務の提供の場所を表示するものとされます。
・指定商品(出願時に商標の使用をするものとして指定する商品)の品質、効能、用途などを間接的に表示する商標は、3条1項3号に該当しないものとされます。指定役務についても同様の扱いです。
(4)ありふれた氏または名称(3条1項4号)
(5)極めて簡単で、かつ、ありふれた標章(3条1項5号)
(6)3条1項1号〜5号までに該当するものの他、需要者が誰の業務の商品やサービスかを認識できないもの。
需要者とは、その商品やサービスを利用する人達という意味です。
ありふれたネーミングや一般的に使用されている言葉などが該当します。、
出版物やメディアの名称は3条1項3号の審査基準でどのように扱われるかと言うと、
・書籍の題号:題号がただちに特定の内容を表示するものとして認められるときは、品質を表示するものとする。
・新聞や雑誌などの定期刊行物の題号:原則として、自他商品の識別力があるものとする。
・フィルム、CDなどの題名:題名がただちに特定の内容を表示するものと認められる場合は、品質を表示するものとする。
・放送番組名:番組名がただちに特定の内容を表示すると認められるときは、役務の質を表示するものとする。
飲食店の屋号などの場合は、国の名前や地名などが特定の料理(例えばフランス料理、イタリア料理、北京料理など)を表示すると認められるときは、その役務の質を表示するものとされます。
屋号やネット販売などの小売等のサービス(役務)の場合、商標が取り扱い商品を表示すると認められるときは、その役務の「提供の用に供する物」を表示するものとされます。
尚、3条1項の規定による「商標登録を受けることができるかどうか」が判断されるのは、査定(ここで言う「査定」は、「商標登録の査定」という意味です)のときです。
そのため、ネーミング(商標)を考えた当時は商品やサービスに対してその呼び方を誰もしてなかったけど、今は俗称や慣用的な名前として使われている、といったネーミングを商標出願したい、といった場合には注意が必要です。
余談ですが、方言を使ったネーミングはどうなのか?
審決や裁判例を見ると、造語として扱われるケースがあるようです。
<商標法3条2項>
3条2項は、使用により識別力が生じた商標について規定されています。
3条1項3号〜5号に該当する商標であっても、商標を使った結果、特定の者の出所表示として、その商品やサービスのユーザーの間で全国的に認識されたものについては商標登録を受けることができると規定されています。
ただし、3条2項を適用して登録が認められるのは、出願された商標と使用されている商標が同一で、指定商品や指定役務と使用されている商品やサービスが同一の場合のみです。
そのため出願された商標と使用されている商標に違いがあれば、使用により識別力を有するに至った商標とは認められません。
ただし、出願した商標と使用した商標が、概観において同視できる程度に商標としての同一性を損なわないと認められるとき(明朝体とゴシック体の違い、縦書きと横書きの違いなど)は、3条2項の判断で考慮されます。
尚、商標が使用により識別力を有したかどうかの判断と証拠は、3条2項に関する審査基準に掲載されています。
<まとめ>
商標法3条1項に基づいて商標登録されやすいネーミングを考えるときは、
・商品やサービスそのものに使われている言葉、慣用表現、俗称、略称、産地、原材料、効能、用途、などのみから成るネーミングを避ける。
・ありふれた名称を普通に用いられる方法で表示したネーミングを避ける。
などといったところでしょうか。
次回のブログでは、商標の不登録事由が書かれた、商標法4条に関する審査基準を紹介します。
2011年11月12日
ドメインと商標権と不正競争防止法 おまけ
おまけ ブランディング戦略とドメイン名と商標権
「ドメインと商標権と不正競争防止法」のシリーズを書いて、ドメイン名を使う場合、ドメイン紛争だけでなく、商標権や不正競争防止法の視点からもトラブルが起きるリスクを考え、対策をとる大切さを感じました。
ドメイン名をブランディングの一環として取得し、使用する場合、次のような方針でドメイン名を使用することが好ましいと思われました。
・自社のブランド名(事業ブランド、商品のブランドなど)とセカンドレベルドメインを統一する。
自分のブランドと他のブランドを識別し、お客様に「どこのブランドのサイトか?」をわかりやすく示すことが目的です。
・同業他者の商品名、サービス名、事業名などと似ているドメイン名を避ける。
消費者がドメイン名を見たとき、「どこの商品やサービスのサイトか?」、「どんなイメージを持つか?」を考えることが大切です。
ブランド名とドメインを統一する場合、ブランド名をアルファベットだけの文字列で表記すると、消費者はどのようなイメージを持つでしょうか?
・ドメイン名の中で、「消費者が自分のサイトを識別する文字列はどこか?」を意識する。
ブランド名の一部をドメイン名として使う場合は、ドメイン名の中から「ブランド名を識別できる文字列」を消費者目線で考えて、ドメイン登録することをお勧めします。
・冗長なドメイン名を避ける
長いネーミングは、消費者が短縮して使う場合が多々あります。
例えば「マクドナルド」の場合、「マック」、「マクド」などと呼ばれています。
また、パソコンなどで長いURLを入力することは面倒なので、ユーザーの利便性を考慮して、短いセカンドレベルドメインを取得し、活用する場合もあります。
短いドメイン名を使う場合は、前述したことと同様に、「ブランド名を識別できる文字列」を消費者目線で考える必要があります。
・ドメイン名の「商標としての使用」に注意。
サイトのドメイン名をそのままブランド名として使う場合などは、そのドメインが商標として使用されたと判断される場合があるので注意が必要です。
例えば、○○○.jp、△△△.comといったドメイン名を取得して、それをブランド名やサービスの名称として使う場合、他者の商標権に抵触しないかを調べることが大切です。
・ドメイン名を商標出願したいとき、自分のドメイン名が他者の商標権に抵触する可能性を調べたいときは?
平成20年(行ケ)第10295号 審決取消請求事件の判例(詳しくは「ドメインと商標権と不正競争防止法 その3」をご覧下さい)では、.jpや.comのようなトップレベルドメインは出所識別標識としての呼称や観念が生じることはできないとの判断が示されていることから、セカンドレベルドメインについて商標権の調査を行うと良いでしょう。
なお、登録できるドメイン名と商標権は異なる話しなので、他者の商標権侵害の回避や商標出願を行い、さらにドメインの取得を行う場合は、利用できるドメイン名の調査と商標調査の両方が必要です。
「ドメインと商標権と不正競争防止法」のシリーズを書いて、ドメイン名を使う場合、ドメイン紛争だけでなく、商標権や不正競争防止法の視点からもトラブルが起きるリスクを考え、対策をとる大切さを感じました。
ドメイン名をブランディングの一環として取得し、使用する場合、次のような方針でドメイン名を使用することが好ましいと思われました。
・自社のブランド名(事業ブランド、商品のブランドなど)とセカンドレベルドメインを統一する。
自分のブランドと他のブランドを識別し、お客様に「どこのブランドのサイトか?」をわかりやすく示すことが目的です。
・同業他者の商品名、サービス名、事業名などと似ているドメイン名を避ける。
消費者がドメイン名を見たとき、「どこの商品やサービスのサイトか?」、「どんなイメージを持つか?」を考えることが大切です。
ブランド名とドメインを統一する場合、ブランド名をアルファベットだけの文字列で表記すると、消費者はどのようなイメージを持つでしょうか?
・ドメイン名の中で、「消費者が自分のサイトを識別する文字列はどこか?」を意識する。
ブランド名の一部をドメイン名として使う場合は、ドメイン名の中から「ブランド名を識別できる文字列」を消費者目線で考えて、ドメイン登録することをお勧めします。
・冗長なドメイン名を避ける
長いネーミングは、消費者が短縮して使う場合が多々あります。
例えば「マクドナルド」の場合、「マック」、「マクド」などと呼ばれています。
また、パソコンなどで長いURLを入力することは面倒なので、ユーザーの利便性を考慮して、短いセカンドレベルドメインを取得し、活用する場合もあります。
短いドメイン名を使う場合は、前述したことと同様に、「ブランド名を識別できる文字列」を消費者目線で考える必要があります。
・ドメイン名の「商標としての使用」に注意。
サイトのドメイン名をそのままブランド名として使う場合などは、そのドメインが商標として使用されたと判断される場合があるので注意が必要です。
例えば、○○○.jp、△△△.comといったドメイン名を取得して、それをブランド名やサービスの名称として使う場合、他者の商標権に抵触しないかを調べることが大切です。
・ドメイン名を商標出願したいとき、自分のドメイン名が他者の商標権に抵触する可能性を調べたいときは?
平成20年(行ケ)第10295号 審決取消請求事件の判例(詳しくは「ドメインと商標権と不正競争防止法 その3」をご覧下さい)では、.jpや.comのようなトップレベルドメインは出所識別標識としての呼称や観念が生じることはできないとの判断が示されていることから、セカンドレベルドメインについて商標権の調査を行うと良いでしょう。
なお、登録できるドメイン名と商標権は異なる話しなので、他者の商標権侵害の回避や商標出願を行い、さらにドメインの取得を行う場合は、利用できるドメイン名の調査と商標調査の両方が必要です。
2011年10月16日
ドメインと商標権と不正競争防止法 その4 ドメイン名に対し商標権侵害が認められた事例
ドメインと商標権と不正競争防止法
その4 ドメイン名に対し商標権侵害が認められた事例
ドメイン名の使用で、商標権侵害は認められるか?
企業や事業でインターネットのサイトが不可欠な今、このような問題を気にされる方もいらっしゃるとおもいます。
今回紹介するのは、「ドメイン名の使用につき商標権侵害及び商標法上の先使用権の抗弁が認められた事例」(知財管理 Vol.56 No.4 2006 判例研究:No.301)です。
このブログでは大まかな内容をまとめていますので、詳細を知りたい方は、論文をお読み下さい。
この事例は、第1事件(平成14年(ワ)第13569号商標権侵害差止請求事件)と第2事件(平成15年(ワ)第2226号商標権侵害差止請求事件)の2つの争いがありましたが、今回は第1事件のみを紹介します。
第1事件は、登録商標と同一または類似ドメイン名の使用が商標権侵害と認められ、損害賠償請求(一部)が認められた事例です。
原告はG社、被告はD社でした。
G社が登録した商標と類似したドメイン名(以下、「標章」と記載)をインターネット上で使用したD社を相手どり、D社の標章の使用の差止めと損害賠償請求をしました。
以下、争点と判旨をまとめると、
ア D社はドメイン名を商標(ただの記号や文字列ではなく、商品やサービスを区別をするために使う標章)として使用していたか?
D社のホームページの記述などから、D社がドメイン名をどのように使っていたか(「使用様態」といいます)が判断されました。
ホームページに「ナントカ.JPは、〜」と書かれていたことから、D社がただのドメイン名としてではなく、商標として使っていたと判断されました。
イ D社の商標は、G社の登録商標と似ているか?
判旨には、「二つ以上の語の組み合わせからなる文字商標は、全体において一体性が認められ、全体から一定の概観、呼称、または観念が生じることがなく、または、語の間に識別力に強弱があったり、語の中の一部が需要者に特に印象付けられたりする場合には、要部というべき一部を分離ないし抽出してその部分が有する概観、呼称、または観念による商標の類否判断をすべきである。」と述べられていました。
D社の商標の場合は、その商標の要部がG社の登録商標と同じ外観(見た目)と呼称(呼び方や発音)と似ていて、観念(商標に対して、そのサービスや商品を利用する人が持つイメージ)も似ていると言えることが示された。
ウ D社がD社サイトで行っている行為とG社商標権の知ってい役務は類似するか
商標が登録商標と似ているだけでは、商標権の侵害とは言えません。
商標権の侵害といえるためには、登録商標の指定役務(商標登録の際に出願人が指定した商品やサービス)と、侵害したと主張される商標(以下、「当該商標」と記載)が同一または類似の役務(商品やサービス)に使用されている必要があります(商標法25条、37条1号)。
役務が似ているかどうかの判断は、
・役務類似するか否かは、両者の役務に同一または類似の商標を使用したときに、当該役務の取引者ないし需要者に同一の営業主の提供に係わる役務と誤認させるおそれがあるかによって決めるべきであると解するのが相当。
・類否の判断にあたっては、取引の実情を考慮すべきであり、具体的には役務の提供の手段、目的または場所が一致するかどうか、需要者の範囲が一致するかどうか、業種が同じかどうかなどを総合的に判断すべきである。
といった方針が示されています。
D社がD社のサイトで行っている業務は、G社商標権の指定役務である電子計算機通信ネットワークによる広告の代理業務と同一ないし類似するということができると判断されました。
以上の認定に基づき、裁判所はD社がD社サイトで提供する業務において、D社標章の使用はG社の商標権の侵害にあたるとし、その使用中のD社標章2および3の使用の差止めを認めた。
また、D社にG社の損害賠償の支払いを命じ、G社のその余の請求を棄却した。
以上のように、この事例では、ドメイン名の使用が商標権侵害と認められ、損害賠償請求も認められました。
ちなみに論文に記載されている第2事件は、商標法上の先使用権が認められた事例です。
第1事件とは逆に、原告がD社で被告がG社でした。
「G社に先使用権は認められるか」という争点について、
・ D社商標出願時には、G社標章はインターネット上で求人事項の掲載等を行うG社の役務を示すものとして、東京、大阪、あるいは名古屋を中心とする地域において、就職活動に関心を持つ需要者層の間で広く認識されていたと認めるのが相当である(商標法31条1項の周知性の要件を満たす)。
・ G社の標章の使用は、不正競争を目的に出たものではない。
と判断されました。
私個人の感想として、
・ドメイン名を決めるときは、商標権侵害回避の努力をすることが望ましい。
特に、自分が登録しようとするドメイン名と同じ商品やサービスを同業者が行っている場合は注意が必要。
・ドメイン名をURL以外に、(商品やサービスなどの名前)として使う場合は商標としての使用とみなされるケースがある。
・ブランディングなどで、ドメイン名と同じ商標を使う場合は、ドメイン名の主要なトップ・レベル・ドメイン以下の文字を商標登録することにより、模倣したサイトに権利行使できる可能性がある。
といったことでした。
ドメイン名を決める場合、そのドメイン名をとれるかとれないかだけで判断しがちです。
しかし、ブランディングでドメイン名とサービスや商品の名前を統一する場合、商標調査の結果も含めてドメイン名を決めると、トラブルを避けやすくなると思います。
その4 ドメイン名に対し商標権侵害が認められた事例
ドメイン名の使用で、商標権侵害は認められるか?
企業や事業でインターネットのサイトが不可欠な今、このような問題を気にされる方もいらっしゃるとおもいます。
今回紹介するのは、「ドメイン名の使用につき商標権侵害及び商標法上の先使用権の抗弁が認められた事例」(知財管理 Vol.56 No.4 2006 判例研究:No.301)です。
このブログでは大まかな内容をまとめていますので、詳細を知りたい方は、論文をお読み下さい。
この事例は、第1事件(平成14年(ワ)第13569号商標権侵害差止請求事件)と第2事件(平成15年(ワ)第2226号商標権侵害差止請求事件)の2つの争いがありましたが、今回は第1事件のみを紹介します。
第1事件は、登録商標と同一または類似ドメイン名の使用が商標権侵害と認められ、損害賠償請求(一部)が認められた事例です。
原告はG社、被告はD社でした。
G社が登録した商標と類似したドメイン名(以下、「標章」と記載)をインターネット上で使用したD社を相手どり、D社の標章の使用の差止めと損害賠償請求をしました。
以下、争点と判旨をまとめると、
ア D社はドメイン名を商標(ただの記号や文字列ではなく、商品やサービスを区別をするために使う標章)として使用していたか?
D社のホームページの記述などから、D社がドメイン名をどのように使っていたか(「使用様態」といいます)が判断されました。
ホームページに「ナントカ.JPは、〜」と書かれていたことから、D社がただのドメイン名としてではなく、商標として使っていたと判断されました。
イ D社の商標は、G社の登録商標と似ているか?
判旨には、「二つ以上の語の組み合わせからなる文字商標は、全体において一体性が認められ、全体から一定の概観、呼称、または観念が生じることがなく、または、語の間に識別力に強弱があったり、語の中の一部が需要者に特に印象付けられたりする場合には、要部というべき一部を分離ないし抽出してその部分が有する概観、呼称、または観念による商標の類否判断をすべきである。」と述べられていました。
D社の商標の場合は、その商標の要部がG社の登録商標と同じ外観(見た目)と呼称(呼び方や発音)と似ていて、観念(商標に対して、そのサービスや商品を利用する人が持つイメージ)も似ていると言えることが示された。
ウ D社がD社サイトで行っている行為とG社商標権の知ってい役務は類似するか
商標が登録商標と似ているだけでは、商標権の侵害とは言えません。
商標権の侵害といえるためには、登録商標の指定役務(商標登録の際に出願人が指定した商品やサービス)と、侵害したと主張される商標(以下、「当該商標」と記載)が同一または類似の役務(商品やサービス)に使用されている必要があります(商標法25条、37条1号)。
役務が似ているかどうかの判断は、
・役務類似するか否かは、両者の役務に同一または類似の商標を使用したときに、当該役務の取引者ないし需要者に同一の営業主の提供に係わる役務と誤認させるおそれがあるかによって決めるべきであると解するのが相当。
・類否の判断にあたっては、取引の実情を考慮すべきであり、具体的には役務の提供の手段、目的または場所が一致するかどうか、需要者の範囲が一致するかどうか、業種が同じかどうかなどを総合的に判断すべきである。
といった方針が示されています。
D社がD社のサイトで行っている業務は、G社商標権の指定役務である電子計算機通信ネットワークによる広告の代理業務と同一ないし類似するということができると判断されました。
以上の認定に基づき、裁判所はD社がD社サイトで提供する業務において、D社標章の使用はG社の商標権の侵害にあたるとし、その使用中のD社標章2および3の使用の差止めを認めた。
また、D社にG社の損害賠償の支払いを命じ、G社のその余の請求を棄却した。
以上のように、この事例では、ドメイン名の使用が商標権侵害と認められ、損害賠償請求も認められました。
ちなみに論文に記載されている第2事件は、商標法上の先使用権が認められた事例です。
第1事件とは逆に、原告がD社で被告がG社でした。
「G社に先使用権は認められるか」という争点について、
・ D社商標出願時には、G社標章はインターネット上で求人事項の掲載等を行うG社の役務を示すものとして、東京、大阪、あるいは名古屋を中心とする地域において、就職活動に関心を持つ需要者層の間で広く認識されていたと認めるのが相当である(商標法31条1項の周知性の要件を満たす)。
・ G社の標章の使用は、不正競争を目的に出たものではない。
と判断されました。
私個人の感想として、
・ドメイン名を決めるときは、商標権侵害回避の努力をすることが望ましい。
特に、自分が登録しようとするドメイン名と同じ商品やサービスを同業者が行っている場合は注意が必要。
・ドメイン名をURL以外に、(商品やサービスなどの名前)として使う場合は商標としての使用とみなされるケースがある。
・ブランディングなどで、ドメイン名と同じ商標を使う場合は、ドメイン名の主要なトップ・レベル・ドメイン以下の文字を商標登録することにより、模倣したサイトに権利行使できる可能性がある。
といったことでした。
ドメイン名を決める場合、そのドメイン名をとれるかとれないかだけで判断しがちです。
しかし、ブランディングでドメイン名とサービスや商品の名前を統一する場合、商標調査の結果も含めてドメイン名を決めると、トラブルを避けやすくなると思います。
ラベル:商標権
2011年09月07日
ドメインと商標権と不正競争防止法 その3 判例から考えるドメイン名と商標権
ドメインと商標権と不正競争防止法
その3 判例から考えるドメイン名と商標権
ブランディングなどのために、商標とドメインを同じものにしたい。
もしドメイン名を商標として出願すると、どうなるのでしょうか?
このような場合について、今回は判例から学んでみました。
紹介する判例は、ドメイン名を商標として出願する場合や、商標として判断されるのはドメイン名のどの部分かを考える上で参考になると思います。
(このブログでは概要をまとめただけですので、詳細を知りたい方は、実際の判例をお読み下さい)
平成20年(行ケ)第10295号 審決取消請求事件
知財高裁(判決言渡 平成21年1月29日)
判決:原告の請求を棄却
原告である企業が特許庁が不服2007―1926号事件について、平成20年6月12日にした審決の取り消しを求めた事案です。
争点は、原告である企業が出願した商標と類似するか(以下、「本願商標」と記載)が引用商標(商標法4条1項11号)でした。
本願商標は二段の横書きの文字列で構成されていました。
上段に"SPORTS LABORATORY"という文字が書かれ、その下に"Sportsman.jp"の文字が"SPORTS LABORATORY"よりも大きな太字で書かれていました。
この商標に対し、特許庁が示した5つの引用文献には、"SPORTSMAN"、 "SPORTS MAN"、「スポーツマン」という文字が書かれていました。
特許庁が示した審決の主な内容は、「本願商標は引用文献と類似し、指定商品においても同一または類似のものを含むから、商標法4条1項11号により商標登録を受けることができない」というものでした。
そこでこの企業は、審決の取り消しを求めました。
<企業側が主張する審決取り消しの主張の概要>
・商標の上段の文字と下段の文字は一体である。
・下段の文字は"sportsman.jp"であり、"sportsman"だけに自他商品の識別標識(自社と他者の商品を区別できる)をする機能があるわけではない。
・下段の文字の"sportsman.jp"について、"sportsman"と".jp"を分けたり、".jp"を除外したりする必要はない。
・".jp"を含めた文字、"sportsman.jp"からは、「スポーツマン」という呼称は生じない。
・".jp"を含めた文字、"sportsman.jp"からは、「運動競技選手」、「スポーツの得意な人」のような観念(イメージ)が生じることを考慮する意味はない。
<特許庁側の主張(反論)の概要>
・下段の"sportsman.jp"の文字は上段の文字に比べて大きく、太字で書かれていることから、下段の"sportsman.jp"の文字部分も自他商品の識別標識機能がある。
・下段の"sportsman"の文字は、「スポーツマン、運動好きな人」を意味する英語であり、".jp"の文字は、インターネットにおける国別コードトップ・レベル・ドメイン名(以下、「ccTLD」と記載)を意味するため一般的な表示として知られているもので、"sportsman.jp"の文字は、全体としてドメインの形式によるものと理解される。
・"sportsman.jp"の文字部分は、外観上も中間にピリオドがあるため、"sportsman"と".jp"の文字が分離されて見られる。
・"sportsman.jp"の文字全体から生じる読み方、「スポーツマンドットジェイピー」は13音と長く、"sportsman"の観念については「スポーツマン(運動競技の選手、スポーツの得意な人)」を意味する言葉として知られているため、"sportsman.jp"の文字全体からはドメイン名として理解いされる場合があるとしても、それ以上の特定の意味を持たない。
・以上の理由から、"sportsman"にも自他商品の識別能力がある。
・引用文献では、"SPORTSMAN"、 "SPORTS MAN"、「スポーツマン」の文字から構成されるため、「スポーツマン(運動競技の選手、スポーツの得意な人)」の観念が生じる。そのため、本願商標と引用文献とは、呼称および観念が共通している商標で、同一または類似の商品に使った場合、その出所(販売者など)について誤認混同(間違えたり混乱したりする)ことが起きる恐れがある。
<裁判所の判断の概要>
(1)商標の類否の判断
・商標法4条1項11号にかかわる商標の類否は、対比される両商標(本願商標と引用文献)は、類似の商品または役務に使用された場合に、商品または役務の出所に誤認混同を生じる恐れがあるか否かで決めるべき。
・商品またはそれには商標の外観、観念、呼称等が取引者、需要者(お客さんなど)に与える印象、記憶、連想当を総合して考察すべきで、しかもその商品の取引の実情を明らかにし、できる限り、具体的な取引の状況に基づいて判断すべきである。・商標は、その構成部分全体によって他人の商標と識別すべく考案されているもので、みだりに、商標構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは許されない(商標に含まれる一部の文字だけで他人の商標と同じか、似ているか、などを判断してはいけないという意味)。
・しかし取引の実際では、各構成部分がそれを分離して観察(商標の文字の一部だけを見る)することが不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常に必ずしもその構成部分全体の名称によって呼称、観念されず、その一部だけによって簡略に呼称、観念される。
・複数の構成部分の一部(例えば、商標に含まれる一部の文字)が、取引者、需要者(お客さんなど)に対して、商品や役務(サービスなど)の出所識別標識として強い印象を与えるものと認められる場合、商標のそれ以外の部分から出所識別標識としての呼称、観念が生じないと認められる場合などは、商標の一部を抽出し、この部分を他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断できるというべき。
(2)ドメインについて
・国別コードトップ・レベル・ドメイン(ccTLD この場合は「.jp」)によって、そのドメイン名を取得した主体(運営者や管理者など)が日本に存在する団体または個人であるということは明らかになるが、それ以上に主体が特定されるものではない。
・多くの企業が、自社名や自社ブランド名をセカンド・レベル・ドメイン以下に付けたドメイン名を取得している。
(3)本願商標について
・本願商標について、上段の"SPORTS LABORATORY"と下段の"sportsman.jp"の文字は、取引において分離して観察され、しかも、下段の文字が上段の文字に比べてかなり目立つため、取引者、需要者に対し、商品または役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと言うことができる。
・本願商標の下段、"sportsman.jp"の文字は、ccTLDの".jp"と"sportsman"が結合したドメイン名を想起させることは明らかである。
・ccTLDの".jp"の部分から出所識別標識としての呼称、観念が生じることはできないため、本願商標の下段"sportsman.jp"の重要な部分は、"sportsman"である。
・本願商標の"sportsman"と引用文献では、呼称および観念が同一であり、外観も類似すると言うことができる。
<ドメイン名を商標として出願する場合のポイント>
この判例から、ドメイン名を商標として出願する場合、以下の方針が有効と思われました。
1.セカンドレベルドメインに、出所表示の識別機能がある文字を入れる。
・商標権を取得できるセカンド・レベル・ドメインを目指す。
・ドメイン名から、トップ・レベル・ドメイン(.jpや.comなど)を除いた文字について商標権の調査が必要。
・ドメイン名を取得できる(商標権が登録できても、ドメイン名が使えなければ意味がありません)。
2.ドメインを取得できることと、商標登録の違いに注意。
・ドメイン登録と商標権は、それぞれ別のことです。
その3 判例から考えるドメイン名と商標権
ブランディングなどのために、商標とドメインを同じものにしたい。
もしドメイン名を商標として出願すると、どうなるのでしょうか?
このような場合について、今回は判例から学んでみました。
紹介する判例は、ドメイン名を商標として出願する場合や、商標として判断されるのはドメイン名のどの部分かを考える上で参考になると思います。
(このブログでは概要をまとめただけですので、詳細を知りたい方は、実際の判例をお読み下さい)
平成20年(行ケ)第10295号 審決取消請求事件
知財高裁(判決言渡 平成21年1月29日)
判決:原告の請求を棄却
原告である企業が特許庁が不服2007―1926号事件について、平成20年6月12日にした審決の取り消しを求めた事案です。
争点は、原告である企業が出願した商標と類似するか(以下、「本願商標」と記載)が引用商標(商標法4条1項11号)でした。
本願商標は二段の横書きの文字列で構成されていました。
上段に"SPORTS LABORATORY"という文字が書かれ、その下に"Sportsman.jp"の文字が"SPORTS LABORATORY"よりも大きな太字で書かれていました。
この商標に対し、特許庁が示した5つの引用文献には、"SPORTSMAN"、 "SPORTS MAN"、「スポーツマン」という文字が書かれていました。
特許庁が示した審決の主な内容は、「本願商標は引用文献と類似し、指定商品においても同一または類似のものを含むから、商標法4条1項11号により商標登録を受けることができない」というものでした。
そこでこの企業は、審決の取り消しを求めました。
<企業側が主張する審決取り消しの主張の概要>
・商標の上段の文字と下段の文字は一体である。
・下段の文字は"sportsman.jp"であり、"sportsman"だけに自他商品の識別標識(自社と他者の商品を区別できる)をする機能があるわけではない。
・下段の文字の"sportsman.jp"について、"sportsman"と".jp"を分けたり、".jp"を除外したりする必要はない。
・".jp"を含めた文字、"sportsman.jp"からは、「スポーツマン」という呼称は生じない。
・".jp"を含めた文字、"sportsman.jp"からは、「運動競技選手」、「スポーツの得意な人」のような観念(イメージ)が生じることを考慮する意味はない。
<特許庁側の主張(反論)の概要>
・下段の"sportsman.jp"の文字は上段の文字に比べて大きく、太字で書かれていることから、下段の"sportsman.jp"の文字部分も自他商品の識別標識機能がある。
・下段の"sportsman"の文字は、「スポーツマン、運動好きな人」を意味する英語であり、".jp"の文字は、インターネットにおける国別コードトップ・レベル・ドメイン名(以下、「ccTLD」と記載)を意味するため一般的な表示として知られているもので、"sportsman.jp"の文字は、全体としてドメインの形式によるものと理解される。
・"sportsman.jp"の文字部分は、外観上も中間にピリオドがあるため、"sportsman"と".jp"の文字が分離されて見られる。
・"sportsman.jp"の文字全体から生じる読み方、「スポーツマンドットジェイピー」は13音と長く、"sportsman"の観念については「スポーツマン(運動競技の選手、スポーツの得意な人)」を意味する言葉として知られているため、"sportsman.jp"の文字全体からはドメイン名として理解いされる場合があるとしても、それ以上の特定の意味を持たない。
・以上の理由から、"sportsman"にも自他商品の識別能力がある。
・引用文献では、"SPORTSMAN"、 "SPORTS MAN"、「スポーツマン」の文字から構成されるため、「スポーツマン(運動競技の選手、スポーツの得意な人)」の観念が生じる。そのため、本願商標と引用文献とは、呼称および観念が共通している商標で、同一または類似の商品に使った場合、その出所(販売者など)について誤認混同(間違えたり混乱したりする)ことが起きる恐れがある。
<裁判所の判断の概要>
(1)商標の類否の判断
・商標法4条1項11号にかかわる商標の類否は、対比される両商標(本願商標と引用文献)は、類似の商品または役務に使用された場合に、商品または役務の出所に誤認混同を生じる恐れがあるか否かで決めるべき。
・商品またはそれには商標の外観、観念、呼称等が取引者、需要者(お客さんなど)に与える印象、記憶、連想当を総合して考察すべきで、しかもその商品の取引の実情を明らかにし、できる限り、具体的な取引の状況に基づいて判断すべきである。・商標は、その構成部分全体によって他人の商標と識別すべく考案されているもので、みだりに、商標構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは許されない(商標に含まれる一部の文字だけで他人の商標と同じか、似ているか、などを判断してはいけないという意味)。
・しかし取引の実際では、各構成部分がそれを分離して観察(商標の文字の一部だけを見る)することが不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常に必ずしもその構成部分全体の名称によって呼称、観念されず、その一部だけによって簡略に呼称、観念される。
・複数の構成部分の一部(例えば、商標に含まれる一部の文字)が、取引者、需要者(お客さんなど)に対して、商品や役務(サービスなど)の出所識別標識として強い印象を与えるものと認められる場合、商標のそれ以外の部分から出所識別標識としての呼称、観念が生じないと認められる場合などは、商標の一部を抽出し、この部分を他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断できるというべき。
(2)ドメインについて
・国別コードトップ・レベル・ドメイン(ccTLD この場合は「.jp」)によって、そのドメイン名を取得した主体(運営者や管理者など)が日本に存在する団体または個人であるということは明らかになるが、それ以上に主体が特定されるものではない。
・多くの企業が、自社名や自社ブランド名をセカンド・レベル・ドメイン以下に付けたドメイン名を取得している。
(3)本願商標について
・本願商標について、上段の"SPORTS LABORATORY"と下段の"sportsman.jp"の文字は、取引において分離して観察され、しかも、下段の文字が上段の文字に比べてかなり目立つため、取引者、需要者に対し、商品または役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと言うことができる。
・本願商標の下段、"sportsman.jp"の文字は、ccTLDの".jp"と"sportsman"が結合したドメイン名を想起させることは明らかである。
・ccTLDの".jp"の部分から出所識別標識としての呼称、観念が生じることはできないため、本願商標の下段"sportsman.jp"の重要な部分は、"sportsman"である。
・本願商標の"sportsman"と引用文献では、呼称および観念が同一であり、外観も類似すると言うことができる。
<ドメイン名を商標として出願する場合のポイント>
この判例から、ドメイン名を商標として出願する場合、以下の方針が有効と思われました。
1.セカンドレベルドメインに、出所表示の識別機能がある文字を入れる。
・商標権を取得できるセカンド・レベル・ドメインを目指す。
・ドメイン名から、トップ・レベル・ドメイン(.jpや.comなど)を除いた文字について商標権の調査が必要。
・ドメイン名を取得できる(商標権が登録できても、ドメイン名が使えなければ意味がありません)。
2.ドメインを取得できることと、商標登録の違いに注意。
・ドメイン登録と商標権は、それぞれ別のことです。
ラベル:商標権
2011年08月11日
ドメインと商標権と不正競争防止法 その2 ドメインと不正競争防止法
前回ブログに書いたように、商標権上では、「登録商標」と同一や類似のドメイン名を、「同一類似する指定商品」に対して使われている場合以外は、商標権を侵害していることにはなりません。
文献には、「同一や類似ではない商品の役務」に商標(例えば、登録されていない商標)を含む表示があり、消費者に商品などの混同を引き起こす行為があった場合について書かれていました。
不正競争防止法において、ドメイン名の使用に関連する不正競争行為は、不正競争防止法2条1項1号と、同法2条1項2号に定義されています。
(注:今回の私のブログでは、あくまでも「ドメイン名の使用に関連する不正競争行為」のみを扱っています)
また、不正競争防止法第2条1項12号には、ドメインの不正行為が定義されています。
消費者に混同を引き起こす行為(混同惹起行為)は、不正競争防止法2条1項1号に書かれています。
不正競争防止法第2条1項1号
他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為
著名な表示と同一、類似の表示を他人が使用した場合(著名表示冒用行為)については、不正競争防止法第2条1項1号に記載があります。
不正競争防止法第2条1項2号
自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為
不正競争防止法第2条1項1号と、同法第2条1項2号に該当するドメインの使用(「商品等表示」に該当性、「周知性」または「著名性」の有無、「商品等表示の使用」の該当性、「商品等表示」の類否)については、文献に次のように書かれていました。
(1)「商品等表示」の該当性
不正競争に該当するためには、ドメインが「商品等表示」に該当しなければならない。
商品等表示とは、不正競争防止法2条1項1号括弧書き(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)を言う。
ここにいう「商品」とは、有体物、無体物であることを問わず、「識別製ないし個別化の可能性によってその範囲を画すべき」ものであるとされる。
不正競争防止法における「営業」とは、広く解されており、「事業」といえる。
事業は営利性を問題としない。
ドメイン名が「商品等表示」に当たるというためには、識別力を有し、商品または営業を表示しているかどうかが問題となる。
(2)「周知性」(1号)または「著名性」(2号)の有無
1号の要件である周知性
・周知とは、「特定の者の商品あるいは営業であることを示す表示であることが、相当範囲の需要者の間に広く知られている客観的な状態」のことをいう。
・周知性の地域範囲は、「日本国内に限られないが、原則として日本国内」であること。
・周知性の地域範囲は、全国周知に限らず、一地域で周知であることが求められる。
・不正競争防止法3条の差止請求権を求めるには、自己の営業地域のみならず、差止めの相手方の地域においても周知であることが必要となる。
・周知性の判断については、「商品・役務の性質・種類、取引態様、需要者層、宣伝活動、表示の内容等の諸般の事情から総合的に判断」される。
・需要者とは、「最終需要者に至るまでの各段階の取引業者も」含むものである。
2号の要件である著名性
・通常の経済活動において、相当の注意を払うことによりその表示の私用を避ける程度にその表示が知られていること」が求められる。
・著名性の地域的範囲は、原則として日本国内で全国的であることとされる。
(3)「商品等表示の使用」の該当性
「商品等表示の使用」とは、「他人の商品等表示を商品または営業に用いること」を指している。
ドメイン名が商品等表示に該当したとしても、商品等表示として使用されていなければ、不正競争行為にあたらない。
ドメイン名登録をするのみでウェブページを開設しなければ、商品等表示の使用とは認められない。
ドメイン名の使用のみで、「商品または営業との関係でその出所を表示するものとしてドメイン名が使用されていなければ、商品等表示の使用とは認められない」と解するのが通説的理解である。
(4)「商品等表示」の類否
表示の類否性について、判例「日本ウーマンパワー事件」(最高裁判 昭和58年10月7日 民集37巻8号1084ページ)において、「取引の実情のもとにおいて、取引者、需要者が、両者の外観、呼称、概念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として」判断するのを相当とするとしている。
1号にいう「混同を生じさせる行為」には、両表示に直接の営業主体の混同を生じさせる「狭義の混同惹起」だけでなく、なんらかの関係があると誤信させる「広義の混同惹起行為」も含む。
不正競争防止法2条1項12号で、ドメイン名の不正行為が規定されたのは、不正競争防止法第2条1項1号と2号の適用外の不正なドメインに対応するためです。
不正競争防止法第2条1項12号
不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものをいう。)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為
この条文についての解説が、文献に次のように書かれていました。
不正競争防止法2条1項12号にいう「不正競争」行為というためには、次の三要件を満たす必要がある。
@ 不正の利益を得る目的(図利加害目的)
・「不正の利益を得る目的」とは、「公序良俗、信義則に反する形で自己または他人の利益を不当に図る目的」であり、「単に、ドメイン名の取得、使用等の過程で些細な違反があった場合等を含まないというべき」とされる。
・ 他人い損害を加える目的」とは、「他者に対して財産上の損害、信用の失墜といった有形無形の損害を与える目的」をいう。
(例:自己の保有するドメイン名を不当に高額な値段で転売する目的、他人の顧客週引力を不正に利用して事業を行う目的、当該ドメイン名との関連性を推測される企業に損害を加える目的を有する場合など)
本号で図利加害目的を設けているのは、「保護対象に周知性または著名性を要件としないこと、ドメイン名の使用行為に限らず取得、保有行為をも対象とすること」から、過度の規制を避け、違法性の高い行為だけを取り上げたものといえる。
マクセル事件において、著名表示と類似するドメイン名の使用が図利加害目的にあたるとした。
A 他人の特定商品等表示と同一もしくは類似すること(類否)
・「他人」とは、自然人や法人はもちろん、法人格の有無にかかわらず、団体や企業グループも含み、特定商品表示の主体となるものであればよいとされている。
・特定商品等表示とは、不正競争防止法2条1項12号に規定されている「人の業務に係る氏名、商号、標章その他商品または役務を表示するもの」である。
Bドメイン名を使用する権利を取得、保有、使用する行為であること
・「ドメイン名を使用する権利」とは、ドメイン登録機関にドメイン名の使用を請求できる権利をいう。
・「ドメイン名を取得する行為」には、ドメイン名の登録機関に対する登録申請によってドメイン名を使用する権利を自己のものとする場合の他、登録機関からドメイン名の登録を認められた第三者から移転を受けることによってドメイン名を使用する権利を自己のものとする場合、登録機関からドメイン名の登録を認められた第三者からドメイン名の使用許諾を受ける場合も含まれている。
・ 「ドメイン名を使用する行為」とは、ドメイン名をウェブサイト開設等の目的で用いる行為を指している。
・「ドメイン名を使用する権利を保有する行為」とは、ドメイン名を使用する権利を継続して有することである。
(登録時点では図利加害目的がなくても、使用で図利加害目的を有するに至った場合にも規制の対象とするため、「保有」する行為が明記されている)
尚、不正競争防止法で規定された不正なドメインに対しては、以下の条文に救済が規定されています。
・ 不正競争防止法3条(差止請求権)
・ 不正競争防止法4条、5条(損害賠償請求)
(次回、「その3 判例から考えるドメイン名と商標権」に続く)
文献には、「同一や類似ではない商品の役務」に商標(例えば、登録されていない商標)を含む表示があり、消費者に商品などの混同を引き起こす行為があった場合について書かれていました。
不正競争防止法において、ドメイン名の使用に関連する不正競争行為は、不正競争防止法2条1項1号と、同法2条1項2号に定義されています。
(注:今回の私のブログでは、あくまでも「ドメイン名の使用に関連する不正競争行為」のみを扱っています)
また、不正競争防止法第2条1項12号には、ドメインの不正行為が定義されています。
消費者に混同を引き起こす行為(混同惹起行為)は、不正競争防止法2条1項1号に書かれています。
不正競争防止法第2条1項1号
他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為
著名な表示と同一、類似の表示を他人が使用した場合(著名表示冒用行為)については、不正競争防止法第2条1項1号に記載があります。
不正競争防止法第2条1項2号
自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為
不正競争防止法第2条1項1号と、同法第2条1項2号に該当するドメインの使用(「商品等表示」に該当性、「周知性」または「著名性」の有無、「商品等表示の使用」の該当性、「商品等表示」の類否)については、文献に次のように書かれていました。
(1)「商品等表示」の該当性
不正競争に該当するためには、ドメインが「商品等表示」に該当しなければならない。
商品等表示とは、不正競争防止法2条1項1号括弧書き(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)を言う。
ここにいう「商品」とは、有体物、無体物であることを問わず、「識別製ないし個別化の可能性によってその範囲を画すべき」ものであるとされる。
不正競争防止法における「営業」とは、広く解されており、「事業」といえる。
事業は営利性を問題としない。
ドメイン名が「商品等表示」に当たるというためには、識別力を有し、商品または営業を表示しているかどうかが問題となる。
(2)「周知性」(1号)または「著名性」(2号)の有無
1号の要件である周知性
・周知とは、「特定の者の商品あるいは営業であることを示す表示であることが、相当範囲の需要者の間に広く知られている客観的な状態」のことをいう。
・周知性の地域範囲は、「日本国内に限られないが、原則として日本国内」であること。
・周知性の地域範囲は、全国周知に限らず、一地域で周知であることが求められる。
・不正競争防止法3条の差止請求権を求めるには、自己の営業地域のみならず、差止めの相手方の地域においても周知であることが必要となる。
・周知性の判断については、「商品・役務の性質・種類、取引態様、需要者層、宣伝活動、表示の内容等の諸般の事情から総合的に判断」される。
・需要者とは、「最終需要者に至るまでの各段階の取引業者も」含むものである。
2号の要件である著名性
・通常の経済活動において、相当の注意を払うことによりその表示の私用を避ける程度にその表示が知られていること」が求められる。
・著名性の地域的範囲は、原則として日本国内で全国的であることとされる。
(3)「商品等表示の使用」の該当性
「商品等表示の使用」とは、「他人の商品等表示を商品または営業に用いること」を指している。
ドメイン名が商品等表示に該当したとしても、商品等表示として使用されていなければ、不正競争行為にあたらない。
ドメイン名登録をするのみでウェブページを開設しなければ、商品等表示の使用とは認められない。
ドメイン名の使用のみで、「商品または営業との関係でその出所を表示するものとしてドメイン名が使用されていなければ、商品等表示の使用とは認められない」と解するのが通説的理解である。
(4)「商品等表示」の類否
表示の類否性について、判例「日本ウーマンパワー事件」(最高裁判 昭和58年10月7日 民集37巻8号1084ページ)において、「取引の実情のもとにおいて、取引者、需要者が、両者の外観、呼称、概念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として」判断するのを相当とするとしている。
1号にいう「混同を生じさせる行為」には、両表示に直接の営業主体の混同を生じさせる「狭義の混同惹起」だけでなく、なんらかの関係があると誤信させる「広義の混同惹起行為」も含む。
不正競争防止法2条1項12号で、ドメイン名の不正行為が規定されたのは、不正競争防止法第2条1項1号と2号の適用外の不正なドメインに対応するためです。
不正競争防止法第2条1項12号
不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものをいう。)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為
この条文についての解説が、文献に次のように書かれていました。
不正競争防止法2条1項12号にいう「不正競争」行為というためには、次の三要件を満たす必要がある。
@ 不正の利益を得る目的(図利加害目的)
・「不正の利益を得る目的」とは、「公序良俗、信義則に反する形で自己または他人の利益を不当に図る目的」であり、「単に、ドメイン名の取得、使用等の過程で些細な違反があった場合等を含まないというべき」とされる。
・ 他人い損害を加える目的」とは、「他者に対して財産上の損害、信用の失墜といった有形無形の損害を与える目的」をいう。
(例:自己の保有するドメイン名を不当に高額な値段で転売する目的、他人の顧客週引力を不正に利用して事業を行う目的、当該ドメイン名との関連性を推測される企業に損害を加える目的を有する場合など)
本号で図利加害目的を設けているのは、「保護対象に周知性または著名性を要件としないこと、ドメイン名の使用行為に限らず取得、保有行為をも対象とすること」から、過度の規制を避け、違法性の高い行為だけを取り上げたものといえる。
マクセル事件において、著名表示と類似するドメイン名の使用が図利加害目的にあたるとした。
A 他人の特定商品等表示と同一もしくは類似すること(類否)
・「他人」とは、自然人や法人はもちろん、法人格の有無にかかわらず、団体や企業グループも含み、特定商品表示の主体となるものであればよいとされている。
・特定商品等表示とは、不正競争防止法2条1項12号に規定されている「人の業務に係る氏名、商号、標章その他商品または役務を表示するもの」である。
Bドメイン名を使用する権利を取得、保有、使用する行為であること
・「ドメイン名を使用する権利」とは、ドメイン登録機関にドメイン名の使用を請求できる権利をいう。
・「ドメイン名を取得する行為」には、ドメイン名の登録機関に対する登録申請によってドメイン名を使用する権利を自己のものとする場合の他、登録機関からドメイン名の登録を認められた第三者から移転を受けることによってドメイン名を使用する権利を自己のものとする場合、登録機関からドメイン名の登録を認められた第三者からドメイン名の使用許諾を受ける場合も含まれている。
・ 「ドメイン名を使用する行為」とは、ドメイン名をウェブサイト開設等の目的で用いる行為を指している。
・「ドメイン名を使用する権利を保有する行為」とは、ドメイン名を使用する権利を継続して有することである。
(登録時点では図利加害目的がなくても、使用で図利加害目的を有するに至った場合にも規制の対象とするため、「保有」する行為が明記されている)
尚、不正競争防止法で規定された不正なドメインに対しては、以下の条文に救済が規定されています。
・ 不正競争防止法3条(差止請求権)
・ 不正競争防止法4条、5条(損害賠償請求)
(次回、「その3 判例から考えるドメイン名と商標権」に続く)
ラベル:商標権
2011年08月06日
ドメインと商標権と不正競争防止法 その1 ドメインと商標権
もしも、自分が登録した商標が他人にインターネットのドメイン(例えば「YYY.com」のようなインターネット上のコンピュータやネットワークを識別する、住所のようなもの)として使われたらどうなるのか?
他人の登録商標をドメインとして使うとどうなるのか?
以下、「インターネット空間における商標問題 ドメイン名の差し止めを中心として 平成19年度産業財産権研究推進事業報告書」(平成20年3月 財団法人知的財産研究所 以下、「報告書」と記載)より、日本国内の法的なことについて、要点をまとめてみました。
(詳細やアメリカの法令について知りたい方は、http://kihan.ciao.jp/genon/bookdetail.php?no=21426609 に表示された報告書の本文を御確認下さい)
<ドメイン名の商標権と関連する法的な扱いは? 商標権とは何か?>
1.ドメインの法的な扱いは?
報告書によると・・・
・商標法では、ドメインの定義規定はない。
・不正競争防止法2条9条において、ドメイン名は、「インターネットにおいて、個々の電子計算機を識別するために割り当てられる番号、記号又は文字の組み合わせに対応する文字、番号、記号、その他符号又はこれらの結合をいう」と定義されている。
・ドメイン名登録者は、「ドメイン名権」といった商標権のような排他的使用権はない。
ちなみに自分が考えたドメイン名を使うためには、ドメイン名登録機関へ登録申請しなければいけません。
2. 商標とは何か?
商標の定義は、商標法第2条に規定されています。
法文によると・・・
商標法第二条 この法律で「商標」とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)
商標法第2条の「業として」の意味は、報告書に以下のように記載されていました。
商標法2条1項のいう商標とは、「業として商品又は役務について使用するもの」である。
「業として」は、「一定の目的の下に継続・反復して行う好意として」であり、営利目的の行為であることを要しない(通説)。
商標法18条には、「商標権は特許庁への商標設定登録により発生する」と書かれています。
つまり、特許庁へ商標設定登録されていなければ、商標権を得られません。
商標の登録により商標権を持った人は、侵害の停止または予防を請求することできます(商標法36条1項)。
商標の侵害とみなす行為は、商標法37条に書かれています。
第三十七条 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
一 指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用
二 指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為
三 指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為
四 指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し、若しくは輸入する行為
五 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為
六 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持する行為
七 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をし、又は使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造し、又は輸入する行為
八 登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、又は輸入する行為
商標権侵害の要件は何か?
これについては、報告書に次のように記載されていました。
商標権侵害の要件としては、登録商標と同一又は類似の商標が、指定商品・役務に同一類似する商品・役務について使用されていることであって、混同のおそれを主張、立証する必要はない。
商品や役務を指定する際には、経済産業省令で定められた商品及び役務の区分い従い、商品及び役務を指定する(商標法6条2項、同法施行令1条)。
<ドメイン名をどのように使うと、商標権侵害にあたるか?>
では、どのようなドメイン名の使い方が商標権侵害になるのでしょうか?
ドメイン名が商標に該当するケースが報告書に書かれていました。
・ドメインが商標法37条の商標権侵害になるためには、「使用」が要件になる(登録しただけでは侵害したとは言えない)。
・ 商標法上は「指定商品もしくは指定役務について」使用することが要件となっていることから、他人の同一類似登録商標を同一類似しない指定商品のもとで使用していれば、商標を侵害していることにはならない。
「商標法上の類否」(商標を出願した後の実体審査で、先に登録された他人の商標と同一類似の判断をする場合)については、その基準が「商標審査基準 九、第4条第1項第11号(先願に係る他人の登録商標)」(http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/syouhyou_kijun/20_4-1-11.pdf)に詳しく掲載されています。
(次回「その2 ドメインと不正競争防止法」(改題)に続く)
他人の登録商標をドメインとして使うとどうなるのか?
以下、「インターネット空間における商標問題 ドメイン名の差し止めを中心として 平成19年度産業財産権研究推進事業報告書」(平成20年3月 財団法人知的財産研究所 以下、「報告書」と記載)より、日本国内の法的なことについて、要点をまとめてみました。
(詳細やアメリカの法令について知りたい方は、http://kihan.ciao.jp/genon/bookdetail.php?no=21426609 に表示された報告書の本文を御確認下さい)
<ドメイン名の商標権と関連する法的な扱いは? 商標権とは何か?>
1.ドメインの法的な扱いは?
報告書によると・・・
・商標法では、ドメインの定義規定はない。
・不正競争防止法2条9条において、ドメイン名は、「インターネットにおいて、個々の電子計算機を識別するために割り当てられる番号、記号又は文字の組み合わせに対応する文字、番号、記号、その他符号又はこれらの結合をいう」と定義されている。
・ドメイン名登録者は、「ドメイン名権」といった商標権のような排他的使用権はない。
ちなみに自分が考えたドメイン名を使うためには、ドメイン名登録機関へ登録申請しなければいけません。
2. 商標とは何か?
商標の定義は、商標法第2条に規定されています。
法文によると・・・
商標法第二条 この法律で「商標」とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)
商標法第2条の「業として」の意味は、報告書に以下のように記載されていました。
商標法2条1項のいう商標とは、「業として商品又は役務について使用するもの」である。
「業として」は、「一定の目的の下に継続・反復して行う好意として」であり、営利目的の行為であることを要しない(通説)。
商標法18条には、「商標権は特許庁への商標設定登録により発生する」と書かれています。
つまり、特許庁へ商標設定登録されていなければ、商標権を得られません。
商標の登録により商標権を持った人は、侵害の停止または予防を請求することできます(商標法36条1項)。
商標の侵害とみなす行為は、商標法37条に書かれています。
第三十七条 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
一 指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用
二 指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為
三 指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為
四 指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し、若しくは輸入する行為
五 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為
六 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持する行為
七 指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をし、又は使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造し、又は輸入する行為
八 登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、又は輸入する行為
商標権侵害の要件は何か?
これについては、報告書に次のように記載されていました。
商標権侵害の要件としては、登録商標と同一又は類似の商標が、指定商品・役務に同一類似する商品・役務について使用されていることであって、混同のおそれを主張、立証する必要はない。
商品や役務を指定する際には、経済産業省令で定められた商品及び役務の区分い従い、商品及び役務を指定する(商標法6条2項、同法施行令1条)。
<ドメイン名をどのように使うと、商標権侵害にあたるか?>
では、どのようなドメイン名の使い方が商標権侵害になるのでしょうか?
ドメイン名が商標に該当するケースが報告書に書かれていました。
・ドメインが商標法37条の商標権侵害になるためには、「使用」が要件になる(登録しただけでは侵害したとは言えない)。
・ 商標法上は「指定商品もしくは指定役務について」使用することが要件となっていることから、他人の同一類似登録商標を同一類似しない指定商品のもとで使用していれば、商標を侵害していることにはならない。
「商標法上の類否」(商標を出願した後の実体審査で、先に登録された他人の商標と同一類似の判断をする場合)については、その基準が「商標審査基準 九、第4条第1項第11号(先願に係る他人の登録商標)」(http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/syouhyou_kijun/20_4-1-11.pdf)に詳しく掲載されています。
(次回「その2 ドメインと不正競争防止法」(改題)に続く)