2017年08月04日

自社の発明を特許出願して権利化しても、その特許発明を事業で実施できない場合。

技術調査.jpg

 自社の発明を特許出願して権利化しても、その特許発明を事業で実施できない場合があります。

 はたして、どのような場合でしょうか?
 以下、「工業所有権法逐条解説(第20版)」の「特許法72条」(271ページ〜272ページ)の説明をまとめてみました。


 特許法では、自分の特許権を実施できない場合について、規定しています(特許法72条)。

・自分の特許の出願前の特許発明、登録実用新案、登録意匠(もしくはこれに類似する意匠を利用するもの)を利用するものであるとき。

・特許権がその特許出願の日前の出願に係る他人の意匠権若しくは商標権と抵触するとき。


例1 特許の実施で他人の特許を利用し、実施許諾が必要になる場合。

@ 甲が合金Xを生産する機械を発明し、特許を受けた。
A 乙が@の機械を使って合金Yを生産する方法を発明し、特許を受けた。
B 乙がAの特許を実施する場合、甲に@の機械を使用することについての実施許諾を得なければならない。


例2 特許権と意匠権を抵触する場合。

・自動車のタイヤに特殊な凹凸をつけ、タイヤの摩耗を少なくすることで特許権の対象となり得る。
・同じ凹凸をつけることが視覚にうったえ美感をおこさせるときは、意匠権の対象にもなり得る。


例3 特許権と商標権が抵触する場合。

・物品の形状自体に関する発明が、特許権の対象となり得る。
・同じ物品自体の形状を表示する立体商標が、商標権の対象となり得る。


 このようなケースが起きた場合の対応として、利用または抵触する特許の権利者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができます(特許法92条)が、事前に他者の権利を把握しておくことも大切です。

 「特許権があれば、事業で自分の特許発明を実施できる。」という話しは誤解です。
 特許権があってもきちんと侵害予防調査をして、事業のリスクを減らしてはいかがでしょうか?


参考資料:工業所有権法逐条解説(第20版) 特許法




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2016年03月26日

特許異議の申立と特許調査



 平成26年の特許法改正で特許異議申立制度(いわゆる付与後レビュー)が施行されてから、まもなく1年がたちます。
 特許庁の発表によると、申立日が平成28年3月8日までの異議申立は608件あったとのことです(資料1)。

 IPC別の特許異議申立の状況で意義申立の多い分野を見ると、Cセクション(化学;冶金)が189件と最も多く、次いでAセクション(生活必需品)139件、Bセクション(処理操作;運輸)93件となっています。

 特許異議申立制度は無効審判よりも費用が安く、書面による審理のため申立人の手続きの負担が軽いといった事情もあり(資料2)、事業の障害となる特許がある場合に活用するのも一つの方法だと思います。


 他者の特許に対し、特許異議申立するための特許調査は、ウォッチング(SDI)と無効資料調査を組み合わせて行います。

1.異議申立の対象となる特許を探す(ウォッチング、SDI)。

 特許異議申立は、平成27年4月1日以降に特許公報が発行された特許に対し、特許公報の発行から6ヶ月以内に異議申立をすることができます。

 そのため発行される特許公報を定期的に監視し、抽出した特許公報について異議申立の検討を行う必要があります。
 発行される特許公報の監視は、ウォッチング(SDI)よばれる調査方法で行います。

 問題のある公開公報(または公表公報)が確認された場合は、経過情報を確認し、審査請求が行われたか(または審査請求が行われる可能性があるか)をチェックし、その公報に記載された発明が特許として登録されるか否かを監視します。


2.異議申立の理由と無効資料調査

(1)特許異議申立の理由

 特許異議申立の理由となるものは、次のとおりです(資料2)。

○特許異議の申立ての理由
・ 特許法第 113 条第 1 号
・ 新規事項違反(外国語書面出願を除く、特§17 の 2B)
・ 特許法第 113 条第 2 号
・ 外国人の権利享有違反(特§25)
・ 特許要件違反(特§29、29 の 2)
・ 不特許事由違反(特§32)
・ 先願違反(特§39@ないしC)
・ 特許法第 113 条第 3 号
・ 条約違反
・ 特許法第 113 条第 4 号
・ 記載要件違反(特§36C一、E(四号を除く))
・ 特許法第 113 条第 5 号
・ 外国語書面出願の原文新規事項違反


(2)特許異議申立と無効資料調査

 新規性(特許法29条)、進歩性(特許法29条の2)、先願(特許法30条1項ないし4項)を理由に異議申立をする場合は、無効資料調査と同様の方法で特許異議申立のための資料を収集します。


(3)無効資料をあつかう際の注意点

 「特許異議の申立ての状況、手続の留意点について」(資料1)によると、多く発生している事例の一つとして、「証拠の不備が」が指摘されています。
 具体的には、

証拠の不備

・外国語文献の翻訳文が添付されていない

・証拠ごとに証拠番号(例:甲第1号証)の記載がない

・文書の文字が不鮮明で判読できない

・図書、雑誌等の公知日が特定できない(表紙や奥付がない)

・パンフレット等の頒布時期、発行時期が確認できる資料がない

・インターネット上の情報などが証拠として提出されており、対象となる特許の出願日前の情報であるかが特定できない(図書など公知日が特定できる証拠がある場合はそちらを優先して提出してください)

・ホームページの印刷物にURL、印刷日の記載がない

・実験成績報告書等の作成日・作成者等の記載がない

・証拠を国際公開番号で特定し、国際公開公報を添付すべきところ、添付された証拠が「再公表特許」である

 証拠提出の詳細については、「証拠提出に関する書類の点検と注意事項
」(資料3)に記載されています。

 これらの留意点は、特許調査の結果を報告する際に対処できることも多いです。


参考資料

1.特許庁サイト「特許異議の申立ての状況、手続の留意点について」https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/sinpan/sinpan2/igi_moushitate_ryuuiten.htm 2016年3月26日アクセス

2.「特許異議申立制度の実務の手引き」https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/igi-tebiki/tebiki.pdf 2016年3月26日アクセス

3.証拠提出に関する書類の点検と注意事項
https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/sinpan-binran_16/34-01.pdf 2016年3月26日アクセス


 注:NEDSは特許異議申立のための各特許調査のご相談と検索代行を承っていますが、代理人等の業務はお断りしています。異議申立の手続きの相談、申立の代理人等は弁理士または弁護士にご依頼ください。
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2015年09月22日

異業種参入した商品の特許分析(雑誌記事紹介)

 「知財管理」の2015年8月号に、異業種参入をした事業について、特許分析を行った事例が紹介されていました。 

異業種へ参入し成功した商品に関する特許出願分析
情報検索委員会 第3小委員会
知財管理 2015年8月号(Vol.65 No.8 P1072-1083)

 この記事は、

・特許分析を活用して、各事業が異業種参入に成功したポイントを探る。
・異業種参入の事例を学ぶ。

 の2つの視点から読むことができると思います。
 特許調査をしている私は、今回は後者の視点で記事を読みました。

 記事で紹介されている各事業の特許分析の内容をまとめると、

「ヘルシア」(花王)
 特許の出願内容別推移を検討
・商品の効果や風味等の作用効果毎に出願件数の推移を検討。
・公報の課題や効果から情報を抽出?

「内視鏡」(富士フィルム)
 子会社の吸収に伴 う製品開発への影響を検討。
・発明者と各発明者の特許について分析。

「太陽電池」(昭和シェル)
 事業の進展と特許出願の関係を検討。
・事業のプロジェクト、事業化イベントの際に出願件数がどのように変化したかを分析。
・プロジェクト、事業化イベントはプレスリリース、新聞記事、ニュース等から抽出?

 太陽電池の特許分析の事例では、特許情報とプレスリリース・ニュースに関する情報を組み合わせることで可 能となる分析で、特許情報とそれ以外の情報を組み合わせることで、事業の展開を可視化できることが示唆されています。

 「異業種参入した商品の特許分析」と一言でいっても、実際には調査の目的に応じて様々な分析の手法を使います。

 この記事を読んで、「調査の目的を具体的に考える」(何を知りたいか?)→ 「特許分析の手法の設計」(必要な情報をどのようなデータベースを使うか等) を検討して特許分析を行うという基本 の大切さと、特許分析の基本から応用への展開が理解できました。
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2015年02月07日

中小企業さんのものづくりで気をつけたい,自社製品による他社の特許の侵害。

 中小企業さんの町工場やものづくりの現場では,素材の加工や部品の製造などの技術を生かした製品の製造販売が積極的に行われている様子を見聞きすることが多々あります。
 微力ながら町工場のものづくりに役にたつ情報を伝えたいという思いから,今回のブログ記事では,加工や部品の製造を行う際に,自社が他社の特許権を侵害するリスクについてまとめてみました。
 自社が独自に製品の製造をする場合と,発注を受けて製品の製造をする場合の2つのケースをかんがえてみます。


1 自社が独自に製造をする場合

 このような場合には,自社で製造する製品が他社の特許権に抵触する可能性の有無に注意しましょう。
 製品の開発前に,自分が開発をしたい製品の特許の有無を調べることをおすすめします。
 侵害回避調査(侵害予防調査,クリアランスなどともいいます)で,製品の構成等に基づいて,公開された特許公報と特許公報で,かつ権利が存続しているものの有無を調査します。


2 下請けや製造の依頼に基づいて製品の製造・販売を行う場合

 この場合は,a) 製品の発注者が製品の特許権を持っている場合,b)製品の発注者が特許権を持っていない場合,の2つにわけて考えましょう。


a) 製品の発注者が製品の特許権を持っている場合

 発注者に特許を実施する正当な権限(特許権を持っている,通常実施権や専用実施権を持っている,先使用権がある)がある場合は,下請け業者は発注者の一機関としての行為だとすれば,特許を実施しているのは発注者なので,下請けの行為は特許侵害とはならないとされています。
 下請けの事業者が発注者の一機関に該当するには,次の3つの条件を満たす必要があります。

・発注者が下請けに工賃を支払う契約をしている。
・製品の製造が発注者の指揮監督のもとに行われている。
・製品を全て発注者に引き渡し,下請けが他に販売していない。

 ただし,下請けの事業者が独自に製品の製造や販売を行う場合は,「発注者の一機関」とはみなされず,発注者の特許を侵害する恐れがあるので注意した方がいいと思われます(東京地方裁判所 平成14(ワ)3237 特許権侵害差止請求事件 平成15年12月26日)。

 詳しく知りたい方は,次の裁判例を参考にしてください。

大判昭13・12・22「模様メリヤス事件」
最判平9・10・28「鋳造金型事件」

意匠権の先使用権者の下請けのケースでも,同様の裁判例があります。
最判昭44・10・17「地球儀型トランジスタラジオ受信機事件」


b)製品の発注者が特許権を持っていない場合の部品等の製造や販売

 民法719条には,複数の者が共同で不法行為をして損害を与えたとき,各加害者が連帯してその損害に対する賠償責任を負うと規定があり(共同不法行為),特許の侵害でも同様の考え方がされています。

 ものづくりの現場で,部品の発注者と下請けの事業者が共同で他社の特許権を侵害した事例の裁判例(スチロピーズ事件 大阪地裁昭36年5月4日)があります。

 この事例では,Xが所有しているスチロピーズの製造方法の特許権について,

 被申請人のY1とY2がスチロピーズの生産と販売(特許の一次工程の結果から得られる中間物質に相当)→ 他の加工業者が特許の残りの工程に相当する工程を実施 → 最終的な生成物である多孔性成型体を生産

 という行為があったとされて,被申請人の特許の侵害が争われました。

 「他人の特許方法の一部分の実施行為が他の者の実施行為とあいまって全体として他人の特許方法を実施する場合に該当するとき,例えば一部の工程を他に請負わせ,これに自ら他の工程を加えて全行程を実施する場合,または,数人が工程の分担を定め結局共同して全行程を実施する場合には,(略)いずれも特許権の侵害行為を構成するといえるのであろう。」と言われた通り,複数の事業者がそれぞれ分担して特許の一部を実施し,最終的に特許の権利の範囲を満たす製品の生産や販売をした場合は,下請の事業者も共同不法行為とみなされて特許を侵害したとされる場合もあります。

 自社製品の製造や販売が他社の特許を侵害している可能性を事前に調べることで,訴訟や損害賠償請求,差止請求などのリスクを減らすことが可能です。


3 もしも自社の製品が他社の特許を侵害してしまったら

 特許侵害の訴訟で一般的に行われている,無効の抗弁を活用する方法があります。
 特許法104条の3(特許権者等の権利行使の制限)の1項には,次のように記載されています。

 「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により又は当該特許権の存続期間の延長登録が延長登録無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者又は専用実施権者は、相手方に対しその権利を行使することができない。」

 ここに書かれている「無効にされるべきものと認められるとき」には,その特許の先行例が存在する場合も含まれています。
 そのため,特許を侵害したとされたときには,その特許の先行例を探します(「無効資料調査」といいます)。
 今回の記事では無効資料調査の説明は省略しますが,詳しく知りたい方はお問い合わせください。


 この記事へのご質問,調査のご相談,お問い合わせはお気軽にご連絡ください。
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2014年04月14日

特許明細書等への登録商標の記載と特許検索で使用するキーワードの選択

特許検索で名詞をキーワードにするときは,登録商標を含めると検索漏れを防ぐことができるという話しです。

 「明細書への登録商標の記載について」(http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shutsugan/tourokusyohyo_kisai.htm)というタイトルの特許庁のサイト(以下,「サイト」と記載)に,特許の明細書,請求項,図目,要約書(以下,「明細書等」と記載)に,登録商標が記載されているケースがあるという記事がありました。
 記事の背景には,特許の明細書等へ特許の明細書等への登録商標の記載が行われると,その登録商標が一般名詞化して識別力を失う恐れがあるという問題があります。
 そのため,明細書等への登録商標の記載は公序良俗違反とされてしまいます。

 このような事情から,サイトには「当該登録商標を使用しなければ当該物を表示できない場合に限り使用し、さらに、使用する場合は登録商標である旨を記載するようするようお願いしているところです。(特許法施行規則第24条 様式29[備考9]等)」と書かれています。

 と,ここまでが前置きです。

 サイトには「しかしながら、登録商標である旨を記載することなく、登録商標を明細書等に記載している出願が相当数みられます。」という一文が書かれていました。

 登録商標は原則として明細書に記載してはならないので,特許検索のときにキーワードにする必要はない?
 実際にどのくらいの登録商標が明細書等に記載されているのか?
 登録商標が記載された明細書等がある場合,一般名称や技術用語だけをキーワードにして特許検索をすると登録商標が記載された公報が検索から漏れる恐れがあるのでは? (特許法64条2項4号の規定に基づき不掲載になる可能性も考えられますが)

 サイトには使用頻度の高い登録商標が掲載されています。
 このような理由から,サイトに掲載されているリストを参考に,登録商標がどの程度明細書等へ記載されているかについて検証してみました。


<検証の目的>

 特許検索を行う際に登録商標をキーワードとしない場合に検索漏れが生じる可能性を検討する目的で,明細書等に登録商標が記載されている公報の件数の確認を行う。


<検証方法>

 以下の方法で検索を行い,それぞれの登録商標が要約+請求項または公報全文に記載されている公報のヒット件数を確認した。

・検証の対象とした登録商標
 特許庁サイト「明細書への登録商標の記載について」(参考資料)の「使用頻度の高い登録商標のリスト(五十音順)に掲載されている登録商標をキーワードとした。
 特許検索の実情を考慮し,類似の商品またはサービス名を示す異なる登録商標や異表記がある場合はそれらをorでまとめて検索した。

・使用データベース
 IPDL 公報テキスト検索

・検索日
 2014年4月14日

・検索対象
 2014年4月14日までに日本国内で公開,公告,または公表された特許,実用新案,米国和文抄録,及び中国特許和文抄録。
 全ての公報種別を対象として検索を行うため,公報発行日,公開日,公表日等の日付または期間に関する条件の指定は行わなかった。


<結果>

 結果は以下の通りでした。

イーサネット
・要約+請求の範囲:ヒット件数 2232件
・公報全文(書誌を除く。以下同じ):ヒット件数 5967件

ウィンドウズ
・要約+請求の範囲:ヒット件数 1637件
・公報全文:ヒット件数 14702件

ウォークマン
・要約+請求の範囲:ヒット件数 179件
・公報全文:ヒット件数 834件

ウォシュレット
・要約+請求の範囲:ヒット件数 28件
・公報全文:ヒット件数 304件

カラーコーン
・要約+請求の範囲:ヒット件数 162件
・公報全文:ヒット件数 487件

ガルバリウム鋼板
・要約+請求の範囲:ヒット件数 47件
・公報全文:ヒット件数 1947件

ケーブルベア or ケーブルベヤ
・要約+請求の範囲:ヒット件数 241件
・公報全文:ヒット件数 2317件

コンパクトフラッシュ
・要約+請求の範囲:ヒット件数 690件
・公報全文:ヒット件数 18333件

サーボパック
・要約+請求の範囲:ヒット件数 5件
・公報全文:ヒット件数 55件

サイダック
・要約+請求の範囲:ヒット件数 44件
・公報全文:ヒット件数 387件

セルフォック
・要約+請求の範囲:ヒット件数 368件
・公報全文:ヒット件数 8489件

セロテープ
・要約+請求の範囲:ヒット件数 213件
・公報全文:ヒット件数 14095件

宅急便
・要約+請求の範囲:ヒット件数 41件
・公報全文:ヒット件数 510件

テフロン
・要約+請求の範囲:ヒット件数 13130件
・公報全文:ヒット件数 161486件

トルクス
・要約+請求の範囲:ヒット件数 654件
・公報全文:ヒット件数 3323件

ハーモニックドライブ
・要約+請求の範囲:ヒット件数 258件
・公報全文:ヒット件数 1843件

パイレックス
・要約+請求の範囲:ヒット件数 1004件
・公報全文:ヒット件数 20451件

パトライト
・要約+請求の範囲:ヒット件数 115件
・公報全文:ヒット件数 2250件

バブルジェット
・要約+請求の範囲:ヒット件数 584件
・公報全文:ヒット件数 15123件

パワーゲート
・要約+請求の範囲:ヒット件数 92件
・公報全文:ヒット件数 274件

フェースブック or フェイスブック
・要約+請求の範囲:ヒット件数 40件
・公報全文:ヒット件数 300件

フォトショップ
・要約+請求の範囲:ヒット件数 46件
・公報全文:ヒット件数 1375件

ベルクロ or マジックテープ or マジックファスナー
・要約+請求の範囲:ヒット件数 12043件
・公報全文:ヒット件数 35033件

ペンティアム
・要約+請求の範囲:ヒット件数 267件
・公報全文:ヒット件数 3563件

ポラロイド
・要約+請求の範囲:ヒット件数 350件
・公報全文:ヒット件数 2403件

万歩計
・要約+請求の範囲:ヒット件数 244件
・公報全文:ヒット件数 1367件

リナックス
・要約+請求の範囲:ヒット件数 395件
・公報全文:ヒット件数 2232件

レバーブロック
・要約+請求の範囲:ヒット件数 147件
・公報全文:ヒット件数 1025件


<考察>

 日本国内で公開された公報において,それぞれの登録商標が要約+請求項に記載された公報は5件〜13130件,公報全文では55件〜161486件確認された。今回の結果から,特許検索を行う際に一般名称または技術用語だけをキーワードとした場合,登録商標が記載された明細書等が検索結果から漏れる可能性が予想された。
 ただし,一般名称または技術用語と登録商標の両方が明細書等に記載された公報の件数については確認していないため,登録商標をキーワードとして検索しなかった場合にどの程度の検索漏れが生じるかについては不明である。さらに詳細な検討が必要な場合は,(技術用語 or 一般名称) and 登録商標 で検索を行い,そのヒット件数と登録商標のみをキーワードとして検索した場合のヒット件数と比較する必要があると考えられた。
 特許庁サイト(参考資料)には「やむを得ず登録商標を明細書等に使用する場合、最初の登録商標「○○○」の後に(登録商標)と登録商標である旨の表示をしていただくようお願いします。」との記述があることから,やむを得ず登録商標を明細書等に記載した公報も存在することが予想される。このような公報に関しては登録商標をキーワードとして使用しない場合,検索結果から漏れると考えられた。


<参考>
 
特許庁(平成17年)「明細書への登録商標の記載について」 2014年4月14日アクセス



 実験方法とデータは全て公開しておきました。
 ご質問,ご意見,ご不明な点,ご指摘,その他ご感想などがありましたら,ニーズデザインの長内(eeds_design@Safe-mail.net)までご連絡ください。
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2013年03月24日

改正米国特許法と米国特許調査

【訂正・追記等】

 この記事は2013年3月13日に、「2.旧法・改正法の適用の判断と有効出願日」の記載内容に誤りがあったため、以下の訂正を行いました。

誤:クレームに係わる発明に対し、
正:出願された発明に対し、

誤:有効出願日が2013年3月16日以前のクレームに対しては
正:削除されたクレームを含め、有効出願日が2013年3月16日以前のクレームのみの特許出願に対しては

誤:有効出願日が2013年3月16日以降のクレームは、
正:削除されたクレームを含め、有効出願日が2013年3月16日以降のクレームを一つ以上含むの特許出願に対しては

 「2.旧法・改正法の適用の判断と有効出願日」について、2013年3月30日に改正法が適用される範囲についての説明を追記しました。

 2013年4月3日、誤解を防ぐ目的で以下の説明等の追記と修正を行いました。

・新規性及び非自明性の判断基準日がクレーム発明の有効出願日であるという説明を行う目的で、改正法100条(2)(j)、規則1.109、改正法102条、及び改正法103条に関する記述と説明を追記しました。

・修正前:「旧法・改正法の適用の判断と有効出願日」 → 修正後:「出願された特許及び特許に対する旧法・改正法の適用の判断と有効出願日



 2013年3月16日に米国の先願主義が施行されました。
 米国の特許調査に重要と思われるAIAセクション3に関連した、有効出願日、グレースピリオド、及びこれらに関連する新規性と非自明性に関する規定についてまとめましたので、少しずつブログにアップします。
 なお、くわしく知りたい方は後述の「参考資料」を参照することをお勧めします。
 万一、記載内容の誤り、法令等に関する不適切な記述がありましたら、大変お手数ですがぜひご指摘ください。

 米国の改正特許法の施行に伴い、特許調査で最も影響を受けることは、新規性(米国特許法102条)と非自明性(日本の特許法でいう進歩性に相当。米国特許法103条)の判断の基準日が「有効出願日」(effective filling date)になることだと思われます。



1.有効出願日の定義

 改正米国特許法(以下、「改正法」と記載)では、新規性と非自明性が各クレームの有効出願日に基づいて判断されます。
 この根拠となる条文と規則についてまとめてみました。

 「クレーム発明」とは、クレームで定義された発明のことで、改正法100条(2)(j)で以下のように定義されています(参考資料2)。

改正法100条(2)(j)
  文言「クレーム発明」とは、特許または特許出願におけるクレームにより定義された主題をいう。


 このように定義されたクレーム発明に対し、改正法では新規性と非自明性が有効出願日に基づいて判断されることが改正法102条と103条にそれぞれ規定されています(参考資料2)。


 改正法102条 特許要件;新規性

(a)新規性;先行技術
 次の各項の一に該当するときを除き、人は特許を受ける権利を有するものとする。
(1)クレームされた発明が、有効出願日前に特許されるか、または公然使用、販売、その他公衆に対し利用可能となった場合。
(2)クレームされた発明が米国特許法151条(特許の発行)の規定に基づき登録された特許に記載されているか、または、米国特許法122条(b)(特許出願の公開)の規定に基づき公開された出願に記載されており、かつ、クレームされた発明の有効出願日前に有効に出願されている場合。


 改正法103条 特許要件;自明でない主題

 発明が、同一のものとしては102条に規定した開示または記載されていない場合であっても、特許を受けようとするその主題と先行技術の差異が、クレーム発明の有効出願日前にその主題が全体として、当該主題が属する技術分野において通常の知識を有する者にとって自明であるような差異であるときは、特許を受けることができない。特許性は、発明の行われ方によっては否定されないものとする。


 では有効出願日とは、どのように定義されているのでしょうか。
 有効出願日は、改正法100条(i)(1)に次のように定義されています(参考資料1)。

100条(i)(1)
 特許又は特許出願においてクレームされた発明に対する「有効出願日」とは、 次に掲げるいずれかの日をいう。
(A)サブパラグラフ(B)が適用されない場合には、当該発明に対するクレームを含む特許又は特許出願の実際の出願日。
(B)特許または特許出願が、当該発明に関して米国特許法119条(a)(優先権主張、仮出願)、365条(a)(合衆国以外の国を指定国とする優先権)(b)[国際出願に基づ く優先権)、若しくは365条(b)(合衆国を指定国とする国際出願)に基づいて優先権を付与されたか、または120条(継続出願)、121条(分割出願)、若しくは365条(c)(合衆国を指定国とする国際出願の継続出願)に基づいて先の出願日の便益を受けた出願のうち、最も早い出願日。


 また、改正規則案1.109には、有効出願日について次の定義が記載されています。

 規則1.109 クレーム発明の有効出願日
(a)再発効出願または再発効特許を除く特許または特許出願のクレーム発明の有効出願日は、次の事項のうちの最先のものである。
(1)発明のクレームを含む特許または特許出願の実際の出願日。
(2)特許または出願が当該発明に関し、米国特許法119条、120条、121条、または365条に基づいて優先権を付与されたか、または先の出願日の利益を受けた最先の出願の出願日。
(b)再発行出願または再発行特許におけるクレーム発明に対する有効出願日は、当該発明に対するクレームが再発行しようとした特許に含まれていたとみなすことにより決定される。


 つまり、有効出願日とは、

@ パリ条約上の優先権を主張している場合は、そのクレームに係わる発明に関して優先権の基礎となる最先の出願日。

A 継続出願や分割出願等の場合は、そのクレームに係わる発明に関して出願日は遡及効果を得ることができる最先の出願日。

B 上記の@又はAに当てはまらない場合は、実際の米国への出願日。

 なお、有効出願日はクレーム毎に判断されるため、1つの出願でクレームにより有効出願日が異なるというケースが生じる可能性もあります(参考資料1、2)。



2.出願された特許及び特許に対する旧法・改正法の適用の判断と有効出願日

 特許出願に対し、改正前の米国特許法(以下、「旧法」と記載)が適用されるか、改正法が適用されるかについての判断も、有効出願日により行われます。

・削除されたクレームを含め、有効出願日が2013年3月16日以前のクレームのみの特許出願に対しては、旧法が適用されます。
・削除されたクレームを含め、有効出願日が2013年3月16日以降のクレームを一つ以上含む特許出願に対しては、当該のクレームが削除された場合を含み、先願主義の改正法が適用されます(参考資料1)。

 改正法が適用される範囲について、AIAセクション3では以下のように規定しています(参考資料2)。

(n)発効日
 (1)全般
 本セクションにおいて特に規定される場合を除き、本セクションによる改正は、本法律の制定日から18ヶ月が経過するとき(2013年3月16日)に効力を有するものとし、次に掲げるいずれかのものを含んでいる又はいずれかの時点で含んでいたことのある特許出願及び発行された特許に適用されるものとする。

(A) 米国特許法100条(i)に規定する有効出願日が本項において述べられた発効日(2013年3月16日)以降であるクレームされた発明に対するクレーム。

(B) そのようなクレームを含んでいたことのある特許、いずれかの時点で含んでいたことのある特許、又は特許出願に対する米国特許法120条(継続出願)、121条(分割出願)、又は365条(c)(国際出願における出願日の利益)による特定の参照。

 「いずれかの時点で含んでいたことのある特許」とは、有効出願日が発効日(2013年3月16日)以降のクレームが補正(継続出願や分割出願など)により削除された場合を意味します。
 つまり出願に対しては、有効出願日が3月16日以降であるクレームが一つでもあれば、または過去に有効出願日が3月16日以降のクレームが存在していた場合は、その出願には改正法が適用されます。

 なお、改正法202条と改正法103条が特許出願に対して適用されるとしても、以下の場合は旧法102条(g)が全てのクレームに対して適用されます(参考資料1)。

・出願が、2013年3月16日以前に生じた有効出願日を有するクレームを含むか、過去ある時点で含んでいた場合。
・出願が、2013年3月16日以前に生じた有効出願日を含むか、または過去のある時点において含んでいた継続出願、分割出願、または一部継続出願として、かつて指定されていた場合。



3.有効出願日と米国特許調査

 米国の特許調査を行う場合は、
@ 特許出願または特許の有効出願日を確認。
・優先権主張、継続出願、分割出願の有無を確認。
・旧法が適用されるか? 改正法が適用されるか? の判断。

A 先行例の調査範囲を決める
・改正法が適用される場合は、各クレーム発明の有効出願日以前に公開された文献を対象に調査する。
・旧法が適用される場合は、旧法102条(b)記載のいわゆる"1 year rule"(注)を考慮して先行例を調査する。



 実際に米国の特許調査を行う場合は、これ以外にグレースピリオドを考慮し、新規性喪失の例外となる先行例を引例として使用しないことも効果的な引例を見つけるためには有効な方法と思われます。
 グレースピリオドについては、次回のブログ記事にアップする予定です。

注:旧法102条(b)に特許を受けることができない発明として、「その発明が、合衆国における特許出願日前1年より前に、合衆国もしくは外国において特許を受けた、もしくは刊行物に記載されたか、または合衆国において公然実施もしくは販売された場合」と規定されている。



【参考資料】

参考資料1:「新旧対照 改正米国特許法実務マニュアル ―改正米国特許法、規則及びガイドラインの解説―」 河野英仁 経済産業調査会 2012年.

参考資料2:「米国の先願主義への移行における日本の出願人にとっての留意点」 森友宏 パテント Vol.66 2013.3 P1-P13.
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2012年05月07日

特許判例百選(第4版)から学ぶ調査の考え方 実施可能性と発明の同一性

 「特許判例百選 第4版」(別冊ジュリスト No.209号 2012年4月4日 有斐閣)に,特許調査に役立ちそうな判例と解説が掲載されていましたので紹介します。

  今回紹介する判例は,本願記載の発明と引用文献の対比について、具体的な事例からその考え方を学ぶことができるものと思われました。


 特許調査の注意点

・本願の請求項記載の発明と引用文献記載の発明は,表現形式(特性など)ではなく,開示された技術的思想の実質的な対比によって判断する。
・本願の請求項記載の発明と引用文献に記載された発明が異なる特性によって特定されている場合,「請求項に係わる発明の機能・特性等が他の定義又は試験・測定方法によるものに換算可能であって,その換算結果からみて同一と認められる引用発明の物が発見された場合」であるか否かを検討する。


 以下,記事の内容の簡単なまとめです。



13 刊行物における発明の開示の程度(P28−P29)
 平成19(ワ)第26761号
 特許権侵害差止等請求訴訟事件
 判時2036号125頁,判タ1303号289頁


<事実の概要>

 出願人Xの本件特許発明は、特許請求の範囲を「水とは別に約93重量%以上のアカルボース含有量を有する精製アカルボース組成物」とする物の発明。
 → アカルボースの「純度」を限定した点に特許性が求められる。

 Yはサッカラーゼ阻害「比活性」が77,700 SIU/gである旨の記載があるアカルボースを記載した2件の特許文献(Xの出願によるもの。以下「引用文献」という)が存在すること,および,明細書に純粋なアカルボースの比活性は77,661 SIG/g程度である旨の記載があることなどを指摘し,優先日前に純粋なアカルボースが刊行物に開示されていたとして,新規性喪失による特許無効の抗弁を主張した。
 → 引用文献に記載された「比活性」により,Xの特許発明の「純度」の新規性を否定しようとした。

 しかし,引用文献にアカルボースの純度や精製方法は示されておらず,また,優先日以前にアカルボースの純度の測定方法が知られていたことを示す証拠はなかった。
 引用発明の比活性が純粋なアカルボースの比活性を上回るという矛盾もあった。



<判旨と解説>

1.発明の同一性(本件特許発明と引用文献に記載された発明は同一か?)

・本件特許発明と引用文型に記載された発明の比活性量が極めて近く、引用文献に記載されたアカルボースの純度は,厳密には確定できないとしても,100重量%又はそれに極めて近接したものであると認められる。
・引用文献にアカルボースの純度は開示されていなかったが,「『精製アカルボース組成物』におけるアカルボース以外の成分が不純物であることに照らせば,比活性が高いほど,それに比例してアカルボースの純度も高くなるものと解され,そのことは問う業者であれば容易に想定できるものであると認められる」。
・「比活性により規定されるアカルボースと当該純度のアカルボースが物質として同一であることを否定するのは,不合理といわざるを得ない」。

 以上のこと等から、「純度100重量%またはそれに極めて近接した純度のアカルボースが引用文献にに記載されていたものとするのが相当といえる。」
 (本件特許発明と引用文献に記載されたアカルボースの比活性の差は、測定誤差の範囲内と推測される)


2.実施可能性と刊行物適格性
 引用文献が「刊行物」といえるためには,一般に出願時の技術水準を基礎として,当業者において「特別の思考を要することなく,当該発明を実施しうる程度に」発明が開示されていなければならない。

(1)新規性に対す引用文献の実施可能性

 引用文献にアカルボースの精製方法の記載がなかったため,刊行物適格性が争われた。
 判決ではXが引用文献公開時に高純度のアカルボースを得ていたこと,およびアカルボースの精製方法が従来知られていたことに加え,一般に精製の繰り返しにより高純度の化学物質を取得できるという科学常識を認定し,当業者が出願時に高純度のアカルボースを得ることが可能であったとの結論を導いた。
→ 新規性の文脈で刊行物記載の発明に実施可能要件を求めるのは,引用文献の信頼性の担保に目的がある。そうであれば,出願前の技術水準によって一応利用可能な発明が開示されたときは,「特別の思想を要することなく実施できる程度」までなくとも新規性が失われると考えることもできる。

(2)明細書の記載要件としての実施可能性
 「本件特許の出願時において,当業者が,本件明細書の特許の詳細な説明に記載された精製方法によって,純度98重量%を超える精製アカルボース組成物を容易に得ることができたと認めることはできない」。
→ 明細書の記載要件としての実施可能性は,特許と公開の代償関係から導かれる。



 まとめと感想
 発明の同一性は,検索式で同一又は類似の特許が含まれる蓋然性の高い文献集合を作り,その文献を読み込むときに必要な考え方だと思いました。
 引用文献に記載された発明と本願記載の発明で,表現(特性など)が違うというだけの理由で異なる発明と判断すると,新規性を否定する文献を見逃すことになると思います。

 引用文献記載の発明に関する発明の開示についても,状況に応じて「どの程度の記載があれば十分か」を意識することが必要だと思いました。
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2012年02月13日

プロダクト・バイ・プロセス・クレームを考える その2 プロダクト・バイ・プロセス・クレームと特許調査

 本願の請求項記載の発明がプロダクト・バイ・プロセス・クレームである場合の先行技術調査と、侵害回避調査において引用文献の請求項記載の発明がプロダクト・バイ・プロセス・クレームであった場合の対応について考えてみました。

 前回の記事と重複した部分が多いので、悪しからずご了承下さい。
 尚、この記事の記載内容に誤り、または訂正すべき点等がありましたら、大変お手数ですがニーズデザインまでご連絡頂ければ嬉しいです。



1.先行技術調査

 発明の新規性、進歩性、及び先願の有無を審査する特許の実体審査の判断は、特許・実用新案審査基準に基づいて行われます。
 発明者に対し審査請求の判断材料を提供する目的で行われる先行技術調査においても、特許審査基準に基づいて行うべきです。
 従って、本願の請求項がプロダクト・バイ・プロセス・クレームにより記載されている発明の先行技術調査は、以下の方法によって行うことが望ましいと考えられました。


(1)請求項記載の発明の解釈
@ 請求項記載の発明は、最終的に得られた生産物を意味すると解する。
A ただし、請求項の記載が明確であっても、請求項に記載された用語(発明特定事項)の意味内容が明細書及び図面において定義又は説明されている場合は、その用語を解釈するにあたってその定義又は説明を考慮する。


(2)新規性及び進歩性の判断

 プロダクト・バイ・プロセス・クレームの新規性及び進歩性の判断に対し、合理的な疑いを抱くケースは次の通りです。

@ 新規性
・請求項に係る発明と出発物質が類似で同一の製造工程により製造された物の引用発明を発見した場合
・請求項に係る発明と出発物質が同一で類似の製造工程により製造された物の引用発明を発見した場合
・出願後に請求項に係る発明の物と同一と認められる物の構造が判明し、それが出願前に公知の発明から容易に発明できたものであることが発見された場合
・本願の明細書若しくは図面に実施の形態として記載されたもの又はこれと類似のものについての進歩性を否定する引用発明が発見された場合

A 進歩性
・請求項に係る発明と出発物質が類似で同一の製造工程により製造された物の引用発明を発見した場合
・請求項に係る発明と出発物質が同一で類似の製造工程により製造された物の引用発明を発見した場合
・出願後に請求項に係る発明の物と同一と認められる物の構造が判明し、それが出願前に公知の発明から容易に発明できたものであることが発見された場合
・本願の明細書若しくは図面に実施の形態として記載されたもの又はこれと類似のものについての進歩性を否定する引用発明が発見された場合

 ただし、引用文献の発明がプロダクト・バイ・プロセス・クレームによって記載されたものである場合は、これらの扱いをしません。


(3)先願の判断(特許法39条)

 特許・実用新案審査基準(「第4章 特許法第39条 3.6 製造方法による生産物の特定を含む請求項についての取扱い」によると、「当該生産物と先願発明の物との厳密な一致点及び相違点の対比を行わずに、審査官が、両者が同じ物であるとの一応の合理的な疑いを抱いた場合には、第39条に基づく拒絶理由を通知する。」との記載があります。
 ただし、引用文献の発明がプロダクト・バイ・プロセス・クレームによって記載されたものである場合は、これらの扱いをしません。

・請求項に係る発明と出発物質が類似で同一の製造工程により製造された物の先願発明を発見した場合
・請求項に係る発明と出発物質が同一で類似の製造工程により製造された物の先願発明を発見した場合
・出願後に請求項に係る発明の物と同一と認められる物の構造が判明し、それが先願発明であることが発見された場合
・本願の明細書若しくは図面に実施の形態として記載されたものと同一又は類似の先願発明が発見された場合

 尚、この特例の手法を使わずに第39条の判断を行うことができる場合には、通常の手法により引用文献が先願であるかを判断をします。



2.侵害回避調査

 実体審査が特許庁により行われるものであるのに対し、特許権侵害訴訟は裁判所で行われます。
 従って、侵害回避調査の場合は判例に基づいた調査が有効であると考えられました。
 平成22年(ネ)第10043号の判例(http://www.ip.courts.go.jp/documents/pdf/g_panel/10043.pdf)では、プロダクト・バイ・プロセス・クレームで請求項に記載された発明は、物の特定を直接的にその構造又は特性によることが出願時において不可能又は困難である場合と、それ以外の場合では、権利範囲が異なることが示唆されました。

 そこで、侵害回避調査の結果、引用文権の請求項記載の発明がプロダクト・バイ・プロセス・クレームである場合、

@ 引用文献の請求項記載の発明が、物の特定を直接的にその構造又は特性によることが出願時において、不可能又は困難である場合(真性プロダクト・バイ・プロセス・クレーム)。
→ 発明の技術的範囲は,「特許請求の範囲に記載された製造方法に限定されることなく、同方法により製造される物と同一の物」と解釈される。

A 引用文献の請求項記載の発明が、物の特定を直接的にその構造又は特性によることが出願時において、不可能又は困難であるとは言えない場合(不真性プロダクト・バイ・クレーム)。
→ 発明の技術的範囲は、「特許請求の範囲に記載された製造方法により製造される物」に限定されると解釈される。

 @の場合は、「製造された物」に対して、権利侵害となる可能性を検討する必要があります。
 Aの場合は、「引用文献の請求項記載の製造方法で生産された物」に対して、権利侵害となる可能性を検討します。

 侵害回避調査をする立場としては、問題になるのは、引用文献の発明が真性プロダクト・バイ・クレームか、不真性プロダクト・バイ・クレームかの判断だと思いました。
 明細書に「物の特定を直接的にその構造又は特性によることが出願時において、不可能又は困難である」といった内容の説明が記載されていれば、それを参考に判断できると思われます。
 もしこのような記載がない場合は、出願当時の技術常識などから判断するなどの対応が必要と考えられました。
ラベル:特許
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2012年02月06日

プロダクト・バイ・プロセス・クレームを考える その1 特許の審査と訴訟における請求項の解釈の違い

 化学などの技術分野の発明では、物質の構造などで発明を特定できない物があります。
このような場合、特許の請求項では製造方法で物を特定し、例えば「〜の方法によって製造された物質」といった表現をします。
 製造方法で物の発明を特定した請求項を、「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」と言います。
 プロダクト・バイ・プロセス・クレームについて特許・実用新案審査基準と特許権侵害差止請求控訴事件の判例(平成22年(ネ)第10043号 以下、「判例」と記載)を読み比べてみました。

 今回は「特許の審査と訴訟における請求項の解釈の違い」と題し、審査と侵害差止請求事件におけるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈の違いを紹介します。



1.審査基準における請求項の解釈

 出願した発明の新規性(特許法29条第1項各号)と進歩性(特許法29条第2項)を判断、または判断材料の提供を目的として行う先行技術調査では、特許・実用新案審査基準に基づいた調査をする必要があります。

1−1 新規性

 特許・実用新案審査基準によると、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの新規性の判断の方法について、次のような記載があります。

 請求項中に製造方法によって生産物を特定しようとする記載がある場合には、1.5.1(2)にしたがって異なる意味内容と解すべき場合を除き、その記載は最終的に得られた生産物自体を意味しているものと解する(注)。
 したがって、請求項に記載された製造方法とは異なる方法によっても同一の生産物が製造でき、その生産物が公知である場合は、当該請求項に係る発明は新規性が否定される。

 注意書きには、「出願人自らの意思で、「専らAの方法により製造されたZ」のように、特定の方法によって製造された物のみに限定しようとしていることが明白な場合であっても、このように解釈する。」という記載があります。

 審査における本願と引用文献の対比については、特許・実用新案審査基準には次のように記載されています(参考資料2)。


 当該生産物と引用発明の物との厳密な一致点及び相違点の対比を行わずに、審査官が、両者が同じ物であるとの一応の合理的な疑いを抱いた場合には、その他の部分に相違がない限り、新規性が欠如する旨の拒絶理由を通知する。
 ただし、引用発明特定事項が製造方法によって物を特定しようとするものであるような発明を引用発明としてこの取扱いを適用してはならない。

 プロダクト・バイ・プロセス・クレームで記載された発明について、審査官が一応の合理的な疑いを抱く例は次の通りです(ただし、特例の手法によらずに新規性の判断を行うことができる場合には、通常の手法によって対応します)(参考資料2)。

・請求項に係る発明と出発物質が類似で同一の製造工程により製造された物の引用発明を発見した場合
・請求項に係る発明と出発物質が同一で類似の製造工程により製造された物の引用発明を発見した場合
・出願後に請求項に係る発明の物と同一と認められる物の構造が判明し、それが出願前に公知であることが発見された場合
・本願の明細書若しくは図面に実施の形態として記載されたものと同一又は類似の引用発明が発見された場合



1−2 進歩性

 特許・実用新案審査基準によると、プロダクト・バイ・プロセス・クレームで記載された発明の進歩性の判断について、次のように記載されています(参考資料3)。

 当該生産物と引用発明の対応する物との厳密な一致点及び相違点の対比を行わずに、審査官が、両者が類似の物であり本願発明の進歩性が否定されるとの一応の合理的な疑いを抱いた場合には、進歩性が欠如する旨の拒絶理由を通知する。
 ただし、引用発明特定事項が製造方法によって物を特定しようとするものであるような発明を引用発明としてこの取扱いを適用してはならない。

 審査官が一応の合理的な疑いを抱く例は、次の通りです。

・請求項に係る発明と出発物質が類似で同一の製造工程により製造された物の引用発明を発見した場合
・請求項に係る発明と出発物質が同一で類似の製造工程により製造された物の引用発明を発見した場合
・出願後に請求項に係る発明の物と同一と認められる物の構造が判明し、それが出願前に公知の発明から容易に発明できたものであることが発見された場合
・本願の明細書若しくは図面に実施の形態として記載されたもの又はこれと類似のものについての進歩性を否定する引用発明が発見された場合



2.特許権侵害差止請求における請求項の解釈

2−1 特許権侵害差止請求控訴の事例

 プロダクト・バイ・プロセス・クレームで記載された発明の侵害に関する判例は、平成24年1月27日に知財高裁の大合議で出された判決(平成22年(ネ)第10043号)が参考になります(参考資料4)。
 この判例は、プロダクト・バイ・プロセス・クレームで記載された発明の侵害は、クレームに記載された製造方法によって製造された物に限定されるとした事例です。
 この事案は、本件は,発明の名称を「プラバスタチンラクトン及びエピプラバスタチンを実質的に含まないプラバスタチンナトリウム,並びにそれを含む組成物」とする特許権(特許第3737801号)を有する控訴人が,被控訴人に対し,被告製品は控訴人の特許権を侵害するとして,被告製品の製造販売の差止め及び在庫品の廃棄を求めた事案で、特許権の請求項に記載された発明は、製造方法で物を特定したものでした。
 重要な争点は、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈でした。

 判決文(要旨)の「(1) 特許権侵害訴訟における特許発明の技術的範囲の確定について」のアに、特許権侵害を理由とする差止請求又は損害賠償請求が提起された場合にその基礎となる特許発明の技術的範囲を確定するに当たっては,「特許請求の範囲」記載の文言を基準とすべきである。
 特許請求の範囲に記載される文言は,特許発明の技術的範囲を具体的に画しているものと解すべきであり,仮に,これを否定し,特許請求の範囲として記載されている特定の「文言」が発明の技術的範囲を限定する意味を有しないなどと解釈することになると,特許公報に記載された「特許請求の範囲」の記載に従って行動した第三者の信頼を損ねかねないこととなり,
法的安定性を害する結果となる。
 そうすると,本件のように「物の発明」に係る特許請求の範囲にその物の「製造方法」が記載されている場合,当該発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物に限定されるものとして解釈・確定されるべきであって,特許請求の範囲に記載された当該製造方法を超えて,他の製造方法を含むものとして解釈・確定されることは許されないのが原則である。

 と記載されています。

 イでは、プロダクト・バイ・プロセス・クレームを便宜上「真性プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」と「不真性プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」の2つにわけて判断していました。

・「真性プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」
=物の特定を直接的にその構造又は特性によることが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するため、製造方法によりこれを行っているとき。
 発明の技術的範囲は,「特許請求の範囲に記載された製造方法に限定されることなく、同方法により製造される物と同一の物」と解釈される。

・「不真性プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」
=物の製造方法が付加して記載されている場合において,当該発明の対象となる物を,その構造又は特性により直接的に特定することが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するとはいえないとき。
 発明の技術的範囲は、「特許請求の範囲に記載された製造方法により製造される物」に限定されると解釈される。

 プロダクト・バイ・プロセス・クレームが真性プロダクト・バイ・プロセス・クレームか不真性プロダクト・バイ・プロセス・クレームであるかの判断は、真正プロダクト・バイ・プロセス・クレームに該当すると主張する者が「物の特定を直接的にその構造又は特性によることが出願時において不可能又は困難である」ことについての立証できるか? で判断される。(立証できない場合は不真性プロダクト・バイ・プロセス・クレームとして、発明の技術的範囲を特許請求の範囲の文言に記載されたとおりに解釈・確定するのが相当)との趣旨が記載されていました。



3.考察

 プロダクト・バイ・プロセス・クレームについて特許・実用新案審査基準と判例の読み比べた結果、審査では製造方法によって特定された物の発明を「物の発明」として扱っています。
 一方、特許権侵害差止請求控訴事件の判例では請求項の記載内容に忠実に従い、発明された物がその構造または特性により直接的に特定することが出願時において不可能または困難であると主張できない場合は、請求項記載の物の発明は請求項に記載された製造方法に限定されるとして扱われていました。
 平成22年(ネ)第10043号の判決を受けて、製造方法により特定された物の発明を特許出願し、権利行使を目指す場合は、明細書に発明された物がその構造または特性により直接的に特定することが出願時において不可能または困難であるとの主張を記載することが望ましいと思われました。
 余談ですが、製造方法について権利化する場合は、特許・実用新案審査基準の記載内容に合わせて、製造方法の特許として請求項を記載する必要があります。



4.参考資料

1 特許・実用新案審査基準 第2章 新規性・進歩性1.5.1(3)製造方法によって生産物を特定しようとする記載がある場合(プロダクト・バイ・プロセス・クレーム)
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/tjkijun_ii-2.pdf

2 特許・実用新案審査基準 第2章 新規性・進歩性 1.5.5 新規性の判断(4) 製造方法による生産物の特定を含む請求項についての取扱い
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/tjkijun_ii-2.pdf

3 特許・実用新案審査基準 第2章 新規性・進歩性 2.7 製造方法による生産物の特定を含む請求項についての取扱い
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/tjkijun_ii-2.pdf

4 平成22年(ネ)第10043号 特許権侵害差止請求控訴事件
http://www.ip.courts.go.jp/documents/pdf/g_panel/10043.pdf
(平成23年2月5日現在、知財高裁のサイトには要旨のみが掲載されています)



 次回のブログでは、プロダクト・バイ・プロセス・クレームの特許調査について書く予定です。

 異論、記載内容の誤り、ご意見などがありましたら、お手数ですがneeds_design@Safe-mail.netまで
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